八月十一日 晴天 金曜日

現代語訳へ


朝五時三十分に臥戸を出で居間を掃除し飯時をなし、その
すぐるや否や、すぐ新片町に使に行き家に帰りて髪を
結び、又それより丸山に使ひに行き又餅屋に行き、帰り
しに、ただいま出征致した軍人より玉章お送り下され
しを読み、それより茶の間に家人集まりて色々のはなしを
なし又さかさ裁の単衣を姉と共に縫へ、両袖の出来るや
否や昼飯を用意致し、午前十二時飯時をなし少し休息
致した、それより
妾が本箱を片付けた、かくの如くにあり所に妾が姉
暑中休みにて家に帰り来ぬ、妾が喜び一方ならず
戸口まで向ひ出でそれより色々の話をなし、其荷
物を馬車にまで取りに行き色々の土産をも
らいぬ、家内中妾最も多く貰ひたり、我又大喜び之
れをも又片付け、それより姉共と五六人にて大掃除
をなした、夕飯を食し少休息致し臥戸に入りぬ