八月十七日 晴天 木曜日

現代語訳へ


もありまして、ちとぽんやりとして見つめて居りましたが、母よりの呼び声によりまして
名残惜しくもそこをはなれまして家に入りました、それより昨日のやうに働きまして
髪を結びまして本を少し読みました、而して飯時をなしてから西山の畑に母と
共に参り桑をかひて、それより「きび」「なす」「ささぎ」「なし」大根等をとりまして
帰ろーとして居りましたが私のうちの畑はもう草だらけでしたから、草摘みを頼み
まして家にかへりましたが日はもう暮れまして、家々には燈火がほのぼのと見えました、
早くも家にかへりまして夕飯を食し、少し休みて母と友垣二人と姉と田本に月
見にまへりましたが、非常によい月でしたけれども夜が深け来ましたからこれ
でとどめしよ、本当によかったが紙だくないから実に舌筆にも記されませむで
したの、それより家にかへりましたかもう十時すぎいそき臥戸に入りぬ、さよなら