八月廿三日 晴天 木曜日

現代語訳へ


朝から照り渡りまして一点のくもも見えませむでした
殊に今日は朝から心地よくて、のきにさいづって居るす
ずめの声もいともの楽しう思われました、あたりまへのとを
りに掃除しまして身体を洗拭しました、それより昨日の
日誌をかきつけ髪結びました、而して家事を見ました
ところが私のあねが田舎に参るとの事にてそれの用意を
なし、それから御昼の御はんをたべました、それから暫
時やすみました、而してまた家事の本を見ました、左様にして
居りましたが、もうあきもちがたべましたので遺憾ながらそれを
やめにしまして「手ふきん」をひきました、今日はことに面白く
楽しく姉の唱歌と合奏致しました、そー致しましと時計は早
や五時打ちましたから、急ぎまして夕飯の用意致しました
其ものをたべまして一寸近隣に使に参りましたが、千代子
の君と出あひまして一寸御話致しまして家にかへりました
それより燈火をつけまして英語をみまして又手ふきん
をひきました、而して十二時頃に臥戸にはいりましたよ、さよなら

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(愉快であったでしょう)
 
 
 
 
 
 



『家政教本』明治35年9月発行