八月七日 曇り 月曜日

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今日も又昨日と同じ天気でした。昨日は朝早
くに起きようと思って寝ましたが、今朝も又五時
に起きました。それから姪を三人起こして一人
を背中におんぶして、昨日の七夕竹を新井田川に
流しに行きました。朝の事ですから草葉
が「ダイヤモンド」でも散らした様にビカビカ輝いています。
けれども惜しい事に鳥海山は雲に覆われて全身がか
くれていました。けれど一点の雲の隙間からとても嬉しそうに笑
顔を出していました。毎日続いた雨も今朝はめずらしく
晴れて、見渡すかぎり露は緑野に満ちて希望の光
あふれる若葉には一点の塵もなく、野道の眺めの心地よさ
は中々拙筆で表しきれません。足元から続く草の花に
狭められた細道をたどって行き、知っている限りの唱
歌を歌い尽くしてしばらく新井田川の堤へ着きました。それ
から堤へのぼり、早速新井田川面を眺めると、長々と続いた雨
のためにか、水は川から溢れて向岸に溢れてい
ました。しばらく見入っていたら、私のそばに、少
年が私たちの竹を見つけて走ってくるのがとても
おかしかった、私のそばに来て竹が欲しいとお願いするので、
はははと笑いながら一本を分けてやったら、とても楽し
そうに帰りました。それから持ってきた物を川に流して、しばらく
の間あちこち見渡して帰り路に向かいました。家に帰ったのはもう
六時四十五分頃でした。それから朝飯を食べた後に、居間
を掃除して髪を結びました。今日は、昨日の残り餅が
あるから、それをつかって頭居(くびすえ)に買う団子のようなもの
を作りましたが、うまく出来ませんでした。それから私
が庭の桑をかいて、しばらく休憩した時はもう昼飯
時でした。それからご飯を食べて又しばらく休み、ひとりであ
まりすることもなく暇なので、文机で好きな本を読み
又理科を少し復習しました。それから居間を掃
除して、去年補習科を卒業した斎藤つね江
ちゃんの家に行き、しばらく色々な話をして家に帰り、
寝床の用意をして夕飯を食べました。少し休んで姉たち
とお話した後で蚊帳に入って、又好きな本を見
ました。こうして少ししてから、母が帰りましたと車夫の声がして、
私は嬉しさのうれしさのあまり、取るものも取りあえず
すぐさま玄関まで出迎えに出ました。それから色々面
白いみやげ話をしたのを楽しく聞きました。それから少
し休んで十時に寝ました。さよなら。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(よく書き表されています。なかなか面白い)