八月五日 日 天

翻刻へ


朝四時に起きて居間を掃除し、そ
れから草花を写生しましたが、なかなか
思うように出来なくて、ついに三色だけにして
やめました。それからお昼御飯を用意
しました。しばらくして、花園さんが来て次に藤
井さんが来ました。皆女学校卒業生です。
それから写真を見せたら、あまりに多すぎ
るとあきれられました。それから市原うめをさんの家
に行き、五分程で帰りました。それから眼科
に行って夕飯の用意をして、それから
田んぼに行きました。それは母の使いで船の様子
を姉と一緒に見に行ったのでした。まずそのさ
きは、本当に言葉で言い表す事ができません。
あたりが薄霧につつまれている中、異様
な雲があちこちに浮かんでいて、その中に鳥海の山
が早くもゆかたをぬぎ捨て、一面春めいた
青色になり、その頂上は歴然として天
にそびえている。心に壮大な感情が湧き出て気持ちが
何となくすがすがしくなりました。また稲の葉
の上を吹く風がさらっと私の顔をなでて行く
うれしさとか、水のない所にさざ波がよるの
とか本当に心地いい。九時に寝ました。