では、はじめに町域の全貌をとらえておこう。それには、阿星山に登り、上方から見おろしてみるのもすばらしいが、旧東海道に沿う町並みの中心地や集落の多くが、北部の平野から丘陵にかけて分布しているので、反対に野洲川の堤防付近を散策しながら、地形の塁重(るいじゅう)するようすを立体的に見上げていくのが最もよい。
まず、野洲川が形成した氾濫原(はんらんげん)平野の水田地帯が足元から広がり、国道一号線とJR草津線の軌道が並走している。その向こうに建物が連なっているのが、旧東海道に沿う宿場町の町並みである。
町並みの上方を、緑の絨毯(じゅうたん)のように、なだらかにおおうのが古琵琶湖層からなる丘陵で、その西方では丘陵から若干突出した堆積岩(たいせきがん)からなる松籟(しょうらい)山などの山地が点在している。
さらに、その背後には信楽(しがらき)山地から続く山並みが屏風(びょうぶ)のように連なり、その中心部にひときわ高くそびえているのが阿星山である。その意味で、阿星山はまさに町のシンボル的存在であるといってよい。
写1 阿星山の遠景 石部町北部の国道1号線沿いから、南部の山地を望む。中央部の山頂が阿星山(693メートル)。下部は、阿星山山腹に源を発し町域を横断、野洲川へと注ぐ落合川。河床は改修工事が進み、きれいに整備されている。
このように、町域の地形には、山地・丘陵・底地(平野)・河川が存在し、自然景観を豊かにする主要な地形がそろっている。しかもそれらが南高北低に連続するひと続きの斜面上にあるため、きわめてバランスのとれた景観を展開させているのである。