山地地形の特徴

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ところで、阿星山を中心とした屏(びょう)風のように連なる山地は、どのような性格をもった地形なのだろうか。実は、この山地は、背後に広がる田上・信楽山塊の北端にあたる部分なのである。そこで石部の山地の性格を知るために、若干田上・信楽山地の地形についてふれておかねばならない。
 主として花崗岩からなる田上・信楽山塊は、山間に入ると意外に谷密度が高く、侵食も盛んで早瀬や滝を有し、山腹斜面には花崗岩特有の露岩と岩塊を散在させており、また山頂域には小起伏の山並と瘠(や)せ尾根が続き、きわめて変化に富む山容を見せている。このため登山やハイキングの好地として湖南アルプスとも称され親しまれてきた。
 しかし、この山地を遠くから眺めてみると、山の高さが揃う定高性山地であり、さらにその形成を考えると地塁山地ということになる。
 地塁山地は、かつて平野であった土地が、断層によって分断されて隆起したためできた山地である。
 田上・信楽山地の場合は、調査をしてみると、山中には大きく二段の地形面があることがわかってきた。
 このうち高い方の面の上には、阿星山(六九三メートル)を最高峰に、東方の飯道(はんどう)山(六六四メートル)・西方の竜王山(六〇四メートル)さらに南西の太神(たなかみ)山(五九九メートル)などを有する六〇〇~七〇〇メートルの高さの小起伏平坦面があり、これは三五〇〇万年程前の新生代第三紀ごろに形成された準平原のなごりであると考えられている。
 これに対し、下位の小起伏平坦面が高い面をとりまくように広がっており、そこには石部では栗東町との境をなす尾根上の四七九メートルを示す高まりや、西方の鶏冠(けいかん)山(四九〇メートル)、東方甲西町の四八八メートルの高まり、西方の笹間ヶ岳(四三三メートル)などを有する四〇〇~五〇〇メートルの高さの小起伏平坦面があり、これは二〇〇〇万年程前の新生代第三紀中新世末ごろに形成された準平原のなごりとされている。
 このような二段の小起伏平坦面が存在していることは、この山地の地盤が休止期をはさみながら隆起してきたことを物語っている。