では、そのような差は何に起因して生じているのだろうか。そこで気象を構成する主要素である気温と降水(降雪)量について資料をもとに考えてみよう。
まず気温の方は、図5に示すように基本的には盆地の地形と合致した等値線が読みとれる。すなわち、盆地周囲の山地側の気温が低く、盆地中央部の気温が高くなっており、両地間の温度差は年間を通じ三~四度位である。これには、盆地気温の特徴に加え、近江の場合、盆地床をおおう琵琶湖の広がりが気温の平均化に果している役割が大きい。ただ全体として等値線は南西方に向かって開いており、盆地内ではこの方向に向かう程温暖であることを示している。
では、降水(降雪)量の方はどうだろうか。年間を通してみると、図6で示すように県域での南北差がきわめて大きい。少ない南部では一七〇〇ミリメートル位であるのに対し、多い北部では三〇〇〇ミリメートル以上と約二倍にもおよんでいる。そこで、この差の実態を把握するため、月別の変化について北部の中河内(なかのかわち)と南部の大津における観測値を図7で比較してみた。その結果、全体(総量)として北部の方が多いだけでなく、季節による差が著しいことがわかる。すなわち、南部は夏季に多いのに対し、北部は逆に夏季よりも冬季に多いこと、しかも冬季の数値は降雪によってもたらされているのである。
図6 年平均降水(降雪)量(左) 図5 年平均気温(右)
(1951~1980のデータにより作成)
図7 月別降水量(1951~1978)
このような結果、滋賀県の気候は、大きく北部は日本海側の気候、南部は太平洋側の気候に類似した気候として区分される。なお、その境界は変化の大きい冬季の気候の特徴から東方の愛知(えち)川と西方の和邇(わに)川を結ぶ付近に設定されている。