甲賀郡を走る大動脈

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湖南は全国的にみても交通の要所として注目される地域である。現在においても、大津を過ぎ瀬田川を渡ると、北から順にJR東海道本線・国道一号線・新幹線・名神高速道路が短い間隔で平行して走っており、その位置の重要性がうかがえる。
 古代における官道(かんどう)は、多くの場合きわめて計画性をもち、最短距離を直線的に進み、地方官衙(かんが)を結ぶ幹線道路として重要な機能を果たしていた。地域計画の根幹として、条里や官衙配置の基準として重要視され、現在の高速道路以上にその依存度が高かったものと考えられる。そのような意味において東海道が通る甲賀郡は、大和・山城・伊賀・伊勢の諸国を結び、さらに東国へ通ずる大動脈として重要な地域であった。
 このため、この地域の古代交通路については多くの研究が行われた。足利健亮・服部昌之両氏をはじめ、最近では小林健太郎・高橋誠一・野間晴雄ら三氏の共同研究がみられる。本節もこれらの論に負うところが多い。