写137 売薬ちらし
(石部町教育委員会所蔵、明清寺より寄贈の売薬ちらし用版木より印刷)
①水にてとき、ほしの上へたびたびさすべし。(目ほしはけ薬)
②乳に志たし、しぼりたびたびさすべし。(つき目の薬)
③めしつぶにて手か足のつちふまずにはるべし。(小児口中の薬)
④いたむ歯のうちそとにつけてよし。(歯痛の薬)
⑤はら一切の薬、別して暑気のじぶん猶よし。(神秘丸)
②乳に志たし、しぼりたびたびさすべし。(つき目の薬)
③めしつぶにて手か足のつちふまずにはるべし。(小児口中の薬)
④いたむ歯のうちそとにつけてよし。(歯痛の薬)
⑤はら一切の薬、別して暑気のじぶん猶よし。(神秘丸)
これらのちらしは短冊のようなもので、ほかに正方形で禁物を書いてあるちらしもある。また、包紙にも用法や禁物が記してあったと思われる。こうした短かいちらし文では薬の用法を述べているが、なかには胃病の薬に「のんで治らぬということなし」あるいは皮癬(ひぜん)の薬では「いかなるおもきひぜんにても七日の内に治する事請合」というように治癒や治癒の日限まで請合った文言もある。皮癬というのはひぜんダニによる伝染性の皮膚病で、皮癬の薬は、文化十三年(一八一六)九月、産前産後の安身長寿散とともに藩へ販売許可願いを出した薬である。明清寺の薬剤では、丸薬(神秘丸)・散薬(狂気の薬、安身長寿散)・煎薬(狂気の薬)などが使用されている。ひぜんの薬では胡麻油とすり合わせて塗るのと、薬物を酒に浸してすりつけるのとがある。薬物を酒に浸して用いるひぜんの薬に扱い上の注意として特に「薬あつかいし手にて目・鼻・口にかならずさわるべからず」と記している。それだけに「何程重きひぜんにても七日の間に根切請合」と保証している。このちらしでは京都寺町の丹波屋治兵衛・江州大津市場平野屋弥兵衛・彦根土橋町米屋藤平・同職人町みのや新兵衛が取次店となっている。石部近辺だけでなく、彦根・大津さらに京都にまでかなり広い範囲に販路を広げていたことをうかがわせる。