施策の拡充

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明治六年四月一日の料金均一制の採用、五月一日の政府専掌により、近代郵便としての基礎を整備し終えた郵便は、高まりつつある需要に応えて事業を拡充していった。そのことは郵便ハガキの発行・金子入書状・地方郵便別配達・無料郵便・飛信逓送・外国郵便などの開設、万国郵便連合への加盟などに示されている。
 石部郵便局の明治二十年(一八八七)までの郵便物数取扱状況(表61)、さらに明治九年滋賀県下郵便物数とその種別(表62)、滋賀県下の明治六年~九年の郵便物取扱数(表63)、及び滋賀県下明治七年現在郵便局設置状況(表64)は当地域においても郵便事業が着実に発展していることを物語っている。
表61 石部郵便局郵便物数取扱状況
事項引受配達
年度(西暦)普通特殊普通特殊
  通
明治4(1871)
  5(1872)1,0221,0221,4161,416
  6(1873)3,25493,2634,7174,717
  7(1874)4,70244,7064,3924,392
  8(1875)7,241657,3064,7844,784
  9(1876)9,736959,8315,4305,430
  10(1877)12,19612612,3227,4457,445
  11(1878)13,63016013,7907,7907,790
  12(1879)13,37914513,5248,3428,342
  13(1880)13,5808613,6669,9759,975
  14(1881)16,37310716,48013,79113,791
  15(1882)15,25012615,37615,53715,537
  16(1883)15,3608215,44215,54115,541
  17(1884)21,8269721,92330,77330,773
  18(1885)25,18010425,28442,39442,394
  19(1886)28,9221,92530,84740,11440,114
  20(1887)31,60719431,80140,90240,902
石部郵便局所蔵「記録」より作成

表62 明治9年滋賀県郵便物数とその種別
種別差立配達
書状629,558610,992
書留13,55312,595
ハガキ81,52361,134
書籍見本1,3261,513
新聞紙2,35032,984
無税13,7446,863
金子入2,729563
744,784726,644
内若狭国及び越前敦賀郡の分108,241118,247
滋賀県のみの分636,543608,397
『明治9年郵便年報』(滋賀県版)所収

表63 明治6~9年滋賀県郵便物取扱数
年度差立配達
明治6年194,784203,707
  7年327,057335,470
  8年499,553471,742
  9年636,543608,397
『明治9年郵便年報』(滋賀県版)より作成

表64 滋賀県下、明治7年現在郵便局設置状況
設置年局名
現在まで存続せる局その後廃局(再開局も含む)した局
(局名は当初のもの)(括弧内は廃局年)
明治4年大津、草津、石部、水口、土山
明治5年八日市、西大路、彦根、長浜、守山、八幡、米原、今津、柏原、武佐、岡本、鳥居本、愛知川、木ノ本、塩津、大溝、海津、高宮、堅田三上(6年)、日野(6年)、五ケ庄(6年)、飯ノ浦(7年)、醒ケ井(17年)、番場(17年)、河原市(19年)、中河内(19年)
明治6年春照、山上、長野宮川(7年)
明治7年市場、河内、木戸、坂本、関津、橋本、能登川、南市、柳瀬、粟津、多賀、途中、野村、保坂鮎川、朝妻、大窪、鎌掛、小松、辻村、東坂、松原、宮司(以上10年)
赤ノ井、穴村、今宿、大浦、太田、大野、小川、鏡、桂、木部、郡上、手原、中ノ郷、南庄、速水、平野、深川市場、坊村、三雲、山崎南町、上大森(以上17年)
鍛治屋、川守、田堵野、花沢、政所(以上19年)
北蚊野(21年)
『全国郵便局沿革録』(日本郵趣出版)より作成

 ただ、設置後間もなく廃局があいついでいるのには驚かされるが、その理由のひとつは「取扱役ニ給与ノ金ハ僅ニソノ名ヲ附スノミ、全ク労費ノ実ニ対シテ報フヘキノ額ニアラズ」(『第七次駅逓年報』)と駅逓寮も自ら認めるように、その経済的負担に堪えかね、特にインフレ、デフレなどの経済変動の激しい際に多くの取扱役が辞職したことによる。
 さらに駅逓局では、明治八年一月より郵便為替、同年五月からは郵便貯金も創業するが石部郵便局の取扱開始は貯金が明治十八年六月、為替が同二十三年(一八九〇)十月からである。