高度経済成長期における地域変動は全国的な趨勢であったが、石部町においても同三十五年以降に人口と産業の両面に大きな変動があった。こうした地域変動をもとに次の三つの特性から石部町の地域像を把握していく。
まず、第一に農業地域としての石部である。昭和三十五年以前には農業が石部町の基幹産業であったが、現在においても町内には田園風景が多く見られ、農業も堅実に営まれている。第二に、石部町人口急増の原因となった同三十五年以降の地域変動(工場進出と宅地開発)からみた特性が考えられる。すなわち、内陸工業地域としての石部である。就業人口の変化にみたように、同三十五年から四十五年ごろにかけて、工場が町内に積極的に誘致されたことから、地域の工業化が進んだ。第三に、住宅都市としての石部である。人口動態の推移で示したとおり、同四十五年ごろから社会増加(流入人口の増大)は顕著となり、町内でさかんに住宅開発が行われ、石部町は京都・大阪の通勤圏内にあり、ベットタウン化したのである。以下では、農業地域、内陸工業地域、住宅都市といった地域特性から石部町の地域像を浮き彫りにしていく。