郡山市域の旧石器時代遺跡から出土する石器は、田村町宮田A遺跡・同じく田村町の正直C遺跡、西ノ内の郡山館遺跡・安積町荒井猫田(あらいねこた)遺跡・熱海町の熱海遺跡など、主に石器を作るための元になった石で、しかも1点ないし2点の出土が多い。そのような中で、田村町守山の弥明遺跡(みみょういせき)では、複数の石器がまとまって出土している。出土した石器はすべて頁岩(けつがん)製で、ナイフ形石器が3点・穴を開けるのに使われた角錐状(かくすいじょう)石器が1点・動物の皮から肉を掻(か)き取ったり、なめしたりするのに使用されたと考えられる、円形のエンドスクレイパーが1点などであり、約2万年前の石器と考えられている。切る、削る、穴を開けるなど、石器が多くの道具に分かれた、後期旧石器時代後半の特徴をもった資料である。また、複数の石器が1ヵ所で出土したことから、この遺跡が他の遺跡と異なるのは、たまたま石器の材料が持ち込まれたのではなく、動物などの捕獲(ほかく)と加工そして、ある程度の滞在(たいざい)が考えられる遺跡であることである。
このような石器を携(たずさ)えて、郡山に住んだ旧石器人も季節に応じた食料を求め、植物を採集したり動物を捕(と)ったりしながら移動生活をしていたのであろう。
(柳沼賢治)