狩猟・漁労・採集によって生活していた縄文時代の人びとにとって、食料を手に入れることは高い関心事の一つであった。湖南町の山ノ神遺跡では、縄文後期後半から晩期前半の土器とともに、木製の弓が出土している。この遺跡では、発掘調査前に、弓でシカを射(い)る様子を線刻(せんこく)した礫(れき)が採集された。発掘調査では、プール状のくぼみの中で弓あるいはその未製品が出土し、弓が製作されていた痕跡(こんせき)と考えられる。線刻礫(せんこくれき)は、採集品ではあるが、弓の製作に関わる儀礼などに使用されたものではなかったかと思われる。
(柳沼賢治)