縄文時代の人びとは、環境の変化に対応する過程で、衣食住にまつわる多種多様な道具を、身近な場所で手に入る材料を使って製品化した。
竪穴住居は、打製石斧(だせいせきふ)を使用して掘りくぼめ、周辺の林から磨製石斧(ませいせきふ)で伐採(ばっさい)した材木を使って上屋(うわや)を組んだことであろう。また、身近な衣には、繊維や皮製品が使用されたと思われるが、出土例は決して多くなく、残っているのは極めてまれである。一方に穴の開いた細い骨製の針などは、編布(あみぬの)などを縫(ぬ)うために使用されたものと考えられる。石製のスクレイパーと呼ばれる皮をなめす道具の出土から皮製品の存在も推定される。
食料を得るための道具には、狩猟用(しゅりょうよう)として、旧石器時代から使われている石槍(いしやり)に弓矢が加わった。漁労具(ぎょろうぐ)には、骨製の釣(つ)り針や網(あみ)の錘(おもり)などが、また、調理するために必要な土器は、近くの粘土層(ねんどそう)から原料を手に入れて、野焼きしたのであろう。