久米正雄は長野県上田で生まれた。父由太郎は福島県の近代教育の基礎作りの後、長野県へ転出する。母幸子は安積開拓の指導者立岩一郎の娘である。小学校長であった父由太郎が学校火災で御真影(ごしんえい)焼失の責任を負って自殺し、母の実家開成山に移住した。開成小、金透小、安積中学校(現・安積高校)に学んだ。中学時代に教頭西村雪人指導で新傾向俳句を学び三汀(さんてい)と号した。推薦で第一高校(現・東京大学)入学。芥川龍之介、菊池寛と同期。東大在学中に開成山の牧場をモデルにした『牛乳屋の兄弟』で劇作家としてデビューする。『地蔵教由来(じぞうきょうゆらい)』『阿武隈心中(あぶくましんじゅう)』等郡山を舞台にした戯曲を発表。父の死を描いた小説『父の死』や第一高校時代の学生生活を描いた小説集『学生時代』が高く評価される。夏目漱石門下生となるが、漱石没後令嬢筆子に恋し夏目家出入り禁止となる。この体験を『蛍草(ほたるぐさ)』『破船(はせん)』に描き大正期を代表する作家となった。