安積郡赤津村(現・郡山市湖南町)出身の諏訪三郎は、田村町の遠藤家に滞在して農村青年の理想に燃える姿に接し、小説『大地の朝』に描いてベストセラー作家となった。諏訪のペンネームは故郷赤津で子供時代に遊んだ諏訪神社からとったものである。赤津の半澤家は地主だったが、父が政治に参加して没落する。上京した三郎は、苦学して作家を目指して佐藤春夫に私淑し、「婦人公論」記者として活躍した。作家デビューは雑誌「改造」の『郊外の貧しき街より』である。横光利一、川端康成らと雑誌「文芸時代」を創刊し、『ビルヂング棲息者(せいそくしゃ)』等を発表して作家生活に入った。雑誌「キング」の連載中から話題となったのが『大地の朝』で、単行本化されるとベストセラーとなり、新派劇化され水谷八重子等によって上演された。その他、故郷湖南を舞台にした小説『家』等がある。
(青山和人)