8 真船豊(まふね ゆたか)

145 ~ 145

1902年~1977年

 真船豊は、安積郡福良村(現・郡山市湖南町)に生まれた。村の小学校卒業後に北海道へ養子に出されて苦労し、人間の欲望の醜さを味わった。帰郷してから上京し、兄の学ぶ早稲田実業に入学、早稲田大学文学部に学んだ。アイルランドの劇作家シングやスウェーデンの作家ストリンドベリの文学に影響され、大学を退学して農民運動に入った。父危篤という偽電報で福良に呼びもどされ家にとじこめられる。やがて早大の恩師が保証人となって再び上京して新聞記者となるが、劇作に集中するため1ヵ月で退社。貧困の中で病妻を抱えて苦闘して完成したのが故郷での見聞を反映した『鼬(いたち)』である。方言を科白に取り入れた劇は久保田万太郎演出で上演され、正宗白鳥が激賞して劇作家の地位を得た。戯曲に『山参道(やまさんどう)』、小説『白魚』、自伝に『孤独の徒歩』等がある。