1952(昭和27)年、郡山市は産業振興のため「工場設置奨励(しょうれい)条例」を施行し、条件を満たした輸出産業・重要基礎産業の工場に対する優遇措置(ゆうぐうそち)をとることによって工場の誘致(ゆうち)をはかった。また、市議会内に工場誘致特別委員会を設置し、1955年に「郡山工業地区開発計画」を立てて、工業都市郡山の建設を計画した。1956年には富久山町、1958年には安積町でも工場誘致条例が制定された。
1959年12月の工業統計調査によれば、郡山の産業の実態は、繊維では日東紡の3工場と東北繊維・うすい裁縫など、化学は保土谷化学工場・日本化学郡山工場・東北工業・日本全薬・日本酸素・東北化学・富久山ソーダ・東邦アセチレンなど、鉄と木工では、三菱電機郡山工場のミシンテーブルの木製品や紡績・機械・パルプ・製缶などが主なものである。新しい工場としては、金門石英ガラス、コパル工機、森永乳業、宇野製作所、吉川紙業、三東縫製などが相ついで設立された。
この時期の工業生産出荷額については、1958年の指数を100とすると、1963年には264と3倍近い上昇を示している。また、種類別の出荷額では化学工業が第1位で29%、繊維工業は19%、食品工業が14%、電気器具が11%で、化学と繊維で半分を占めた。
会社名 | 従業員 | 生産物 |
---|---|---|
繊維工場 | ||
日東紡富久山工場 | 人 1350 |
レーヨン・ステーブル合繊紡績糸 |
日東紡郡山第一 | 352 | 絹紡糸・合繊紡績糸 |
日東紡郡山第二 | 550 | 純ビスコース・スフ糸 |
うすゐ裁縫工場 | 40 | 各種作業衣・学生服 |
東和被服郡山工場 | 60 | 作業服・外套・学生服等縫製依托加工 |
化学工場 | ||
保土谷化学工業郡山工場 | 人 561 |
苛性ソーダ・合成塩酸ネオシロックスPCP・殺虫剤・塩素酸加里 |
日本化学工業郡山工場 | 415 | 燐黄・燐酸・熔成燐肥化成肥料・電熔珪カル |
東北工業 | 148 | 青写真感光紙及写真・段ボール函製造開始 |
日本全薬工業 | 96 | 動物用医薬品・注射薬・鉱塩 |
日本酸素郡山工場 | 46 | 酸素の製造販売及びプロパン・カーバイト鎔接断器具の販売 |
東北化学工業郡山工場 | 26 | 酸塩素類・ロダン塩素類 |
富久山曹達 | 80 | 無水芒硝 |
東邦アセチレン郡山工場 | 29 | アセチレンの製造販売 |
鉄・木工工場 | ||
三菱電機郡山工場 | 人 500 |
ミシンテーブル・ラジオ・テレビキャビネット・ホームコタツ・電気行火計 |
郡山製作所 | 86 | 紡績機械・鉋金パルプ水道部品・三菱ミシン脚部制作 |
ジャパナイト | 261 | ジャパナイト吸音板・ジャパボート |
浜津鉄工所 | 70 | TK式軌条運搬器・TK式手車浜津式軌条穿孔器Ⅰ型・Ⅱ型国鉄本社へ納入・英米式センバン制作販売 |
有限会社 安積製作所 | 15 | ボイラー並に一般製缶制作 |
松田製線郡山工場 | 61 | 鉄線・丸釘 |
昭和鉛 | 8 | 鉛管鉛板鉛類の鋳造販売及び精錬 |
東北林産工業 | 50 | 仕組板並・木工用材 |
坪井木材工業 | 40 | (製材一般多量生産を目標) |
郡山合板 | 150 | 合板製造 |
郡山鍍金工業 | 10 | 金属電気メッキ |
舟橋製材製函工場 | 30 | 製材並に専売公社納入の煙草箱の製造・建築工事パネル製造販売 |
東邦金属工業 | 26 | 缶詰各種の空缶を集荷し電気分解法により表面に鍍金した金属錫を再生回収し残る鉄屑の品位を高める |
(『郡山市史6』P342)