第2図は郡山市の農業粗生産額等の推移を示したものである。2006年における個別の農産物産出額で見ると、米が全体の55.5%を占め、米どころ郡山を強く印象付けている。次が野菜で18.7%、畜産が17.2%、果実・工芸農作物が4.7%、その他3.9%の順である。農業産出額が示すように、郡山市における総作付面積に占める水稲の割合が90%を超え、地域によっては全ての耕地が水田利用の所もある。しかしながら米の国内消費量の減少と在庫米の増加により、政府は米の生産調整を強化してきた。1995(平成7)年食管法が廃止され、新たに「食糧法」すなわち「主要食糧の需給と価格の安定に関する法律」が制定されたが、「作る自由、売る自由」をキャッチフレーズとした食糧法のもとでも、減反(げんたん)は継続されている。米は日本が唯一自給できる穀物である。それなのに高価格がゆえに減少した国内需要量に生産を合わせるように減反を強いる政府の策には疑問がある。
こうした状況の中で、郡山市では消費嗜好(しこう)の変化に対応した品種の導入やマーケティングの強化が図られている。1990年以降「コシヒカリ」や「ひとめぼれ」の作付面積を増やし、この2銘柄(めいがら)で全作付面積の8割以上を占めている。郡山市では、この2銘柄を統一ブランド「あさか舞」として全国的なマーケティングを展開し、市場で高い評価を得ている。
農業の生産手段の中で水と土地は他のものには代えられない。郡山市は「安積疏水」と西部地域に広大な農地を有している。これらの農業資源は市民にとって「宝」である。日本の食糧安全保障にとって最も大切なのが農地と水の農業資源であることを忘れてはならない。
(小野澤元久)