95 郡山地域の自然災害

189 ~ 190

 日本人は昔から四季折々に変化する自然と共に歩んできたが、明治の近代化から自然は少しずつ壊され、気がつくと身の回りから自然は遠いものに変わっていった。それでも里山や田畑は守られ、自然の貯水槽の役割を果し、自然がどんなにキバをむこうと、災害は局部的なものに止まっていた。が、昭和も30年代になると、近代化の波は国土のスミズミまで行きわたり、工場群が建ち並び自然は壊滅状態となった。そこへ都市化の波が追い討ちをかけ、大量生産・大量消費の社会となり、自然本来の循環は阻害(そがい)され、大気汚染や公害が発生した。昔の人の移動手段が自分の足で歩くことであったのに、時代と共に生活環境、様式も変化し、利便性を求めた結果が車社会となった。1970(昭和45)年、市は公害課を新設、工場の公害防止策を打ち出したが、大気汚染、騒音、スパイクタイヤ粉じん公害など社会問題として深刻化した。対策として自然循環型社会の構築を目指し、ゴミの分別、水源環境改善など取り組んだものの、O(オー)157問題、鳥インフルエンザ、コイヘルペスなど全国的流行となる。これらの現象は、世界的な地球温暖化問題に発展、いまや温室効果ガス削減、省エネルギー、再生可能エネルギーの推進まで待ったなしの対策が迫られている。

 郡山の自然災害は、その殆(ほと)んどが天候不順による冷夏、長雨、台風などであったが、それに加えて温暖化と思われる被害が増加している。昭和50年代以降で記憶に残る災害は、1980(昭和55)年の冷害、豪雪害、1982(昭和57)年の台風被害、1986(昭和61)年の8.5水害があげられる。

 1980年の冷害は、5月下旬から異常気象が続き、盛夏の8月になっても真夏日は1日だけで、水稲の出穂期から冷害が深刻となり、10月には青田刈りとなった。市農林部のまとめによると、農作物の被害額は作況指数62.7と落ちこみ、水稲50億円をトップに野菜、養蚕(ようさん)、果樹、葉タバコなど総額58億7,000万円となり、1953(昭和28)年に次ぐ戦後2番目の大凶作となった。この年の冬は大豪雪となり、12月23日から降りだした雪は24日、25日と降り積もりドカ雪となった。クリスマスを迎えての一家団欒(だんらん)はライフラインが寸断され全面マヒ状態となった。死者2名、負傷者5名を出し、一般家屋の全半壊57棟、商店工場33棟の被害。また高圧送電線の鉄塔14基が倒壊、8万5,000戸で停電、都市ガスも2万7,000戸で止まり、水道の断水は3万戸。夏の農作物被害に加え、鉄骨パイプハウス332棟が倒壊、民有林の杉や松の倒木も被害甚大となった。道路も国道・県道など主要道路は開通するまで暮れの30日までかかった。

 1982年の台風被害は、この年は5月から7月まで低温、降雨、日照不足が続き、8月に台風10号、9月に台風18号が襲い、郡山を縦断した。鉄道、道路すべてが寸断され、農作物だけでも被害額は18億円を超し、大打撃となった。

 1986年の8.5水害は、1941(昭和16)年以来45年振りの大水害となり、都市化が進む郡山市の水防、防災の考え方を一変させた。8月4日から5日にかけて、温帯低気圧が記録的な集中豪雨をもたらし、阿武隈川に流れ込む谷田川、逢瀬川など各所で堤防が決壊、大水害となった。雨量は204㎜で観測はじまって以来の最大値であった。川はどの川も警戒水位を超え、5日午後4時には久保田梅田地区で、5時には横川地区、6時は水門町、8時過ぎには上行合で大洪水となった。被害は中央工業団地、水門町住居地区、食品団地、卸売市場と広範囲に及び、被害総額400億円を超える甚大なものとなった。この結果、1999(平成11)年には阿武隈川平成の大改修となり、建設省は800億円を投じ郡山では河川合流地点2ヵ所に排水ポンプ場が建設された。

 これ以降も災害は頻発(ひんぱつ)し、その質の変化は明らかに都市化と地球温暖化によるものと推測されるが、それらは一覧表とした。

(伊藤和)
第1表 主な自然災害(1993年~2001年)
月日 災害要因 主な災害状況
1993(H5) 7-9 異常気象 異常低温と長雨、日照不足等により、市内全域で水稲約92億円をはじめ野菜、果樹等に総額101億円の被害
8.27-28 台風11号 湖南町で床下浸水2棟、法面崩壊1ヵ所・路肩崩壊2ヵ所、河川洗掘4ヵ所
1994(H6) 2.21 低気圧 住家全壊1棟、半壊6棟、一部破損37棟、非住家被害46棟、パイプハウス149棟に被害、倒木による交通規制3ヵ所、その他倒木6ヵ所
2.23-24 低気圧 住家半壊2棟、一部破損37棟、非住家被害26棟、パイプハウス12棟に被害、倒木による交通規制2ヵ所、その他倒木1ヵ所
7.8-9 集中豪雨 市内及び中田地区で床上浸水1棟、床下浸水20棟、土砂崩れ2ヵ所、路肩崩壊27カ所、農地被害1.5ha、冠水10ha
7.25 集中豪雨 大槻、亀田、富田、並木地区で床下浸水26棟、道路冠水
9.9 集中豪雨 喜久田、安積、田村地区で床下浸水19棟、路面冠水、水田冠水
9.30 台風26号 田村、中田、湖南地区で床下浸水4棟、法面崩壊及び路肩崩壊15ヵ所、護岸損壊、堤防一部崩壊2ヵ所
7-9 異常気象 市内全域で野菜約1億6千万円をはじめ水稲、飼料作物等に総額約2億円の被害
1995(H7) 8.3 集中豪雨 床下浸水6棟、田村、中田、熱海、湖南地区で道路、路肩法面崩壊15ヵ所、河川護岸、堰等一部決壊5ヵ所
8.16 集中豪雨 市街地を中心に床下浸水43棟、道路冠水8ヵ所
1996(H8) 7.4 集中豪雨 市内で道路冠水30ヵ所
9.25 台風17号 床上浸水1ヵ所、床下浸水5棟、道路冠水3ヵ所、路肩崩落2ヵ所、倒木2ヵ所
1997(H9) 7.24 集中豪雨 床下浸水17棟、市内全域で道路冠水19ヵ所、果樹降雹の被害1ha
8.26 集中豪雨 市内全域で道路冠水28ヵ所、日和田地区停電50戸、床上浸水4棟、床下浸水45棟
1998(H10) 7.22-23 集中豪雨 市内全域で床下浸水64ヵ所、道路冠水42ヵ所、土砂崩れ2ヵ所、法面崩壊2ヵ所、路肩崩壊3ヵ所、農林被害14ヵ所、道路冠水7ヵ所
7.28-29 集中豪雨 市内全域で床上浸水2棟、床下浸水188ヶ所、道路冠水54ヵ所、土砂崩れ11ヵ所、法面崩壊12ヵ所、路肩崩壊7ヵ所、停電5,280戸、農林被害47件
8.4 集中豪雨 床下浸水13棟、道路冠水8ヵ所、土砂崩れ9ヵ所、路肩崩壊4ヵ所、農林被害18件
8.12 集中豪雨 床上浸水1棟、床下浸水9棟、道路冠水19件、土砂崩れ3件、路肩崩壊4件
8.26-31 集中豪雨 市内全域で水稲約1億5千万円、野菜2億円の被害をはじめ食肉流通センター施設2億円など総額5億8千万円の農業関係被害、半壊2世帯、床上浸水394世帯、床下浸水523世帯、道路損壊311ヵ所、河川損壊266ヵ所、被害総額159億円
9.15-16 台風15号 床上浸水2棟、床下浸水6棟、道路冠水2ヵ所、土砂崩れ4ヵ所、法面崩壊6ヵ所、護岸崩壊2ヵ所、倒木等7ヵ所
1999(H11) 7.13 集中豪雨 市内全域で床下浸水12ヵ所、道路冠水7ヵ所、通行止め4ヵ所、法面崩壊4ヵ所、水稲冠水5.7ha、野菜類の冠水9.4ha
9.14 台風16号 富久山地区で床上浸水5世帯、富久山、逢瀬、片平、喜久田地区で床下浸水20世帯、法面崩壊2ヵ所
2000(H12) 7.4 異常気象 大槻、安積地区で床上浸水6棟、床下浸水39棟、道路冠水2ヵ所、停電3,500世帯、田村、中田、安積地区を中心に葉たばこ、野菜、果樹等に2億円の被害
7.20 集中豪雨 旧市内を中心に床下浸水19棟
9.9 集中豪雨 安積地区で床上浸水1棟、安積、富久山、芳賀地区で床下浸水13棟、道路冠水7件
2001(H13) 1.3-4 低気圧 熱海地区で樹木倒木による住家一部破損、床下浸水3棟、停電50棟
1.8 低気圧 パイプハウス倒壊63件、果樹棚倒壊7件、倒木1件
8.28-29 集中豪雨 静、富田、大槻地区床下浸水11棟

(郡山市史 続編3より)

第2表 主な自然災害(2002年~2011年)
月日 要因 被害状況
2002(H14) 7.10-11 台風6号 床上浸水141件、床下浸水207件、非住家被害97件、道路冠水79ヵ所、路肩崩壊92ヵ所、法面崩壊43ヵ所、護岸崩壊55件、被害総額24億円
7.22 大雨 床上浸水2件、床下浸水12件、非住家被害6件、道路冠水3ヵ所
7.23 大雨 床下浸水4件
8.4 大雨 床下浸水8件
8.14 大雨 床下浸水1件
8.15 大雨 床上浸水1件、床下浸水3件
10.1-2 台風21号 床下浸水14件、住家一部損壊7件、非住家被害20件、停電約800戸、道路冠水3ヵ所、路肩崩壊6ヵ所、法面崩壊8ヵ所、路肩流出12ヵ所、防犯灯破損12ヵ所、市内全域で倒木
2003(H15) 7.21 集中豪雨 床下浸水2件、非住家被害2件、法面崩壊1件
2004(H16) 1.8-1.9 暴風 パイプハウス被害10件、温室被害1件
1.23 大雪 パイプハウス被害62件、温室被害4件
2.23 暴風 転倒による重傷者1名、住家一部損壊1件
4.21 暴風 住家一部損壊1件、非住家被害2件
7.10-13 集中豪雨 床上浸水73件、床下浸水388件、非住家被害98件、道路損壊5ヵ所、河川損壊18ヵ所、林道被害7ヵ所、農地・農道等被害27ヵ所
7.17 大雨 住家一部損壊1件、非住家被害2件
7.25 集中豪雨 住家一部損壊1件、床上浸水1件、床下浸水3件、非住家被害1件
8.20 台風15号 住家一部損壊1件、非住家被害2件
10.20-21 台風23号 床上浸水1件、床下浸水11件、非住家被害1件、道路損壊15ヵ所、河川損壊3ヵ所、林道被害2ヵ所
11.27 暴風 住家一部損壊4件、非住家被害4件
2005(H17) 7.30 集中豪雨 床上浸水1件、床下浸水24件、非住家被害3件、護岸陥没1ヵ所、旧市内・安積町を中心に道路冠水多数
8.16 地震 公共施設被害7件
8.20 集中豪雨 落雷による半焼1件、床上浸水10件、床下浸水155件、非住家被害90件、護岸崩落2件、停電約17,000戸、旧市内・富久山町・日和田町を中心に道路冠水多数
2006(H18) 4.3 暴風 住家一部損壊5件
5.28 大雨 非住家被害2件
6.16 大雨 法面崩壊1件、護岸崩壊1件
6.18 大雨 土砂崩れ1件
7.19-24 梅雨前線 法面崩壊22件、路肩崩壊4件、砕石流出1件
8.22 大雨 床下浸水1件
10.6-7 低気圧 土砂崩れ4件、法面崩壊1件、倒木4件、防犯灯倒壊2件
11.12 暴風 パイプハウス被害4件
12.27 低気圧 床下浸水2件、住家一部損壊7件、非住家被害10件、パイプハウス被害29件、温室被害2件、道路冠水1ヵ所、農道崩落4ヵ所、林道崩落2ヵ所、水路崩落1ヵ所、倒木7件
2007(H19) 2.4 暴風 住家一部損壊2件、非住家被害6件
2008(H20) 7.6 大雨 床下浸水1件、非住家被害1件、道路冠水11ヵ所
7.27 集中豪雨 床上浸水10件、床下浸水75件、非住家被害41件、道路冠水33ヵ所、法面崩落6ヵ所、倒木3件、停電約3,120戸
8.28 集中豪雨 床下浸水7件、非住家被害5件、車両水没3件、道路冠水21ヵ所、林道被害4ヵ所
8.28-29 集中豪雨 非住家被害1件、道路冠水1ヵ所、道路損壊1ヵ所
2009(H21) 1.31 大雪 パイプハウス被害2件
2.8 暴風 住家一部損壊2件
8.7 大雨 道路冠水5ヵ所、路面洗掘1ヵ所、倒木1件
8.10 大雨 道路冠水5ヵ所、土砂崩れ4ヵ所、路肩崩れ2ヵ所、路面洗掘2ヵ所、護岸崩落1ヵ所、倒木1件
10.8 台風18号 飛来物による重傷者1名、非住家被害1件、道路冠水2ヵ所、倒木11件、停電約300戸
2010(H22) 3.21 暴風 転倒による負傷者1名、住家一部損壊1件
7.6-7 集中豪雨 床上浸水62件、床下浸水141件、非住家被害312件、道路被害114ヵ所、土砂崩れ130ヵ所、倒木1件
7.15 大雨 床上浸水1件、床下浸水7件、非住家被害7件、道路被害14ヵ所、土砂崩れ9ヵ所
12.3 暴風 負傷者1名
2011(H23) 2.7 暴風 倒木5件
3.11 東日本大震災 死者13名(関連死等含む)、住家全壊2,433件、住家半壊21,325件、住家一部損壊33,772件、非住家被害6,121件、道路・橋りょう等被害2,565ヵ所、護岸被害40ヵ所、水道施設被害1,060ヵ所、下水道マンホール等施設被害779ヵ所、農業施設被害173ヵ所、林業施設被害132ヵ所、公園被害67ヵ所、市営住宅被害25団地、保育所・小中学校等被害143ヵ所、公民館被害24ヵ所、その他公共施設被害62ヵ所
5.30 大雨 倒木1件
7.5 大雨 床下浸水6件、非住家被害4件、道路被害35ヵ所
7.11 大雨 床下浸水3件、非住家被害1件、道路被害12ヵ所
7.26 大雨 土砂崩れ1ヵ所
7.28-29 大雨 倒木1件
8.7 大雨 床下浸水1ヵ所、道路被害2ヵ所
8.15 大雨 道路被害1ヵ所、土砂崩れ1ヵ所
8.18 大雨 床下浸水1件、非住家被害1件、道路被害6ヵ所
8.19 地震 土砂崩れ1件
9.20-22 台風15号 床上浸水1,522件、床下浸水162件、非住家被害234件、道路被害86ヵ所、土砂崩れ86ヵ所、倒木21件