2 広範囲に及んだ被害

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 東北地方は半導体や自動車などの製造業が集積しており、震災の直接的・間接的影響は小さくなかった。東北4県で被災した太平洋岸44市区町村に本社を置く企業は3万2,341社あるが、岩手・宮城・福島3県では全体の3割の企業が津波や原発事故の被害を受けたとみられる。ほとんどが中小企業である。

 半導体産業では、福島県西郷村の信越半導体をはじめ8つの工場が地震の被害を受けて一時操業停止となり、サプライチェーンの一環が絶たれた影響は海外にも及んだ。こうしたことから、大企業の中には工場の海外移転や海外生産の拡大を図るケースが増え、東北地方の製造業の空洞化が広がるのではないかと懸念(けねん)された。自動車関連の製造業でも大きな被害が発生した。

 自動車産業は強固なピラミッド型の生産構造をもち、在庫をできるだけ持たないジャスト・イン・タイム方式をとっており、そのことが大災害の際にサプライチェーンの断絶による損害を大きくする要因になった。

 県の人口は同年10月1日時点で震災前に比べ3万5,406人減少し、198万人台にまで落ちた。原発事故の影響が大きく、人口の減少にはカウントされないが県外避難者の数はその後6万人を超えることになる。避難先は北海道から沖縄まで、全都道府県に及んだ。