原発事故災害の直撃を受けたのは何といっても農業であった。最も警戒されたのが食物を通じた内部被ばくであり、牛肉についてみれば、畜産農家が事故後、屋外に置いてあった稲わらを牛に与えていたことで牛肉が汚染され、それが全国に出回っていた事実が判明して出荷が制限された。郡山のブランド牛である「うねめ牛」は9月に制限が解除されたものの出荷数は減少し、価格も大幅に低下してしまった。
農産物の場合、ひとたび基準を超える放射能が検出されて出荷制限や作付け制限がなされると、その安全性に対する不安や疑念は、対策を講じて制限が解除されたあともなお長期にわたって存在し続ける。いわゆる風評被害である。
風評被害をまともに受けることになったのは観光業界だった。事故の後、例年福島に来ていた県外の学校の修学旅行は、ほとんどが行き先変更になった。反面で、県内観光地の旅館やホテルの中には、浜通りからの避難者の受け入れ施設となり、県の宿泊費援助に支えられて皮肉にも風評被害の一時的な補てんを受ける形になったところもある。
他方で、避難所となることで大きな被害をこうむるケースもあった。コンベンション都市郡山の代表的な施設であるビッグパレットは、それ自体も物理的な地震被害を受けたが、避難者を受け入れる避難所となり、長期にわたり休館を余儀なくされた。