(1) 第二次安倍内閣の地域政策

 第二次安倍内閣の地域政策は、地方自治体の自主的施策を国が支援する地域振興政策というより、地方行政の機能を国家の経済成長戦略に即応した内容で集約し、行政管理手法を中央集権的に地方に義務付けて、地方自治体を国策に動員するものだった(久保木匡介(2020)『第二次安倍政権以降の地方政策(1)』長野大学紀要42-2)。また、従来は総務省、国土交通省、経済産業省などが個別に実施してきた地域政策を、内閣府の地方創生推進事務局が一括し、自治体との窓口となって地域政策を推進した。そして成長戦略の重点的内容は、以下のように次々と追加された。

a. 国家戦略特区による特定地域の国際的競争力の強化(2013(平成25)年)

b. 各自治体が人口減少対策と地域活性化にとりくむ地方創生(2014(平成26)年)

c. 連携中枢都市圏と定住自立圏で自治体間の広域連携の強化(2014(平成26)年)

d. 公共施設の統廃合と再編(2015(平成27)年)

e. 「PFI」、「PPP」を中心とした公共サービスの市場化と公的不動産における民間活力の導入(2015(平成27)年)

f. 「Society5.0」に対応するAI技術を駆使したスマートシティづくりと地方政府のデジタル化(2017(平成29)年)(前掲久保木2020)

g. 経済社会環境分野で持続可能な地域づくりを行い、地域の活性化や課題解決につなげる地方創生SDGs未来都市(2018(平成30)年)

h. デジタル田園都市国家構想による第二次地方創生(2019(令和元)年)

 全国の地方自治体は、政府が次々に提起するこれらの政策をめぐって、大都市から過疎町村までの間で補助金獲得競争と序列化を伴いながら、対応すべき政策の選択と実施を迫られた。郡山市の場合は、本章第5~6節の記述のように、2011(平成23)年に作成した震災復興計画を実施し、それまで5次にわたって実施してきた総合計画を改定しながら、2016(平成28)年に地方版総合戦略として「郡山市人口ビジョン」及び「郡山市総合戦略」を策定、さらに政府によって2019(令和元)年に「こおりやま広域連携中枢都市圏」の中心都市及びSDGs未来都市に指定された。そのため、2020(令和2)年に改訂した「郡山市人口ビジョン」及び「郡山市総合戦略」は、総合計画や5年間の地方創生の継続性と、SDGsやDXデジタル化との関連性を考慮したものになった。

 ここでは、郡山市の対応は第5~6節にゆずり、中央政府の地域政策のなかで、内閣府が担当し上記の政策項目の多くを包含し、かつ第一次から第二次へと重点を変更した地方創生を取り上げる。