(3) 第五次総合計画前期基本計画から後期基本計画へ

 前期基本計画を受けて、2013(平成25)年度から2017(平成29)年度の5年間を計画期間とする後期基本計画を策定、施策を行う際の指針とした。

 前期から後期にかけて、社会経済情勢は大きく変化した。その最たる出来事が2011(平成23)年3月11日の東日本大震災・福島第一原子力発電所事故であった。郡山市も地震による建物被害、放射性物質による環境汚染といった大きな被害を受けた。また、人口減少は全国的な動向であるが、2010(平成22)年度に実施された国勢調査において、調査開始以降、郡山市も初めて減少に転じた。つまり、後期基本計画はこれらによるマイナスからの再生が期されたといえよう。

 こうした情勢を受けて、後期基本計画ではまちづくりの主要課題を「東日本大震災及び原子力災害からの復旧・復興」「安全・安心な市民生活の確保」「子育て支援の充実と高齢化社会への対応」「新たなエネルギー社会の構築」「地域経済の活性化と安定した雇用の確保」「地域コミュニティの活性化と絆づくり」「郡山の魅力の発信」「主体性あるまちづくりと計画的な財政運営」の8点とした。これらは前期の5点を上回るもので、市政における危機意識を示していると考えられる。

 以上をふまえた後期基本計画の特徴は大きく二つある。社会経済情勢の変化、特に大震災・原発事故からの復興を加速することを念頭に置き、一つは基本構想に新たに三つの重点目標を設定したことである。もう一つは同じく基本構想の大綱に、新たに「手を取り合って明日を創るまち」を加え七つとしたことである。

 まず、三つの重点目標は主要課題への対応を図るため、特に、子育て・教育環境の充実、災害からの復興と都市力の向上、活力ある産業の創出に焦点をあて、5年間の計画期間に先導的・重点的に取り組む目標として位置づけられた。以下はその内容である。


a 重点目標1 未来を担う人づくりプログラム

 「まちづくりは、人づくり」の考えのもと、子どもの成長過程に応じた育ちの環境づくり、原子力発電所事故による放射線の影響を気にすることなく子どもたちが安全・安心に活動できる環境の充実、豊かな人を育む学びの環境づくり、安心して子どもを生み育てることができるための子育て支援の充実を図り、未来を担う子どもたちの元気な笑顔がはじけるまちの構築を目指す。


b 重点目標2 復興・創造プログラム

 放射線量の低減化を図るための市民との協働による効率的・効果的な除染活動や市民の長期的な健康管理等の原子力災害への対応とともに、台風や局地的な集中豪雨による浸水被害、地震などの大規模災害に対応するための防災・減災対策や感染症の発生、テロなどへの対応を含めた総合的な危機管理体制の構築を図り、すべての市民が安全・安心に暮らすことができるまちの構築を目指す。また、災害に強く利用しやすい総合交通体系の整備、魅力ある地域資源の積極的な発信などにより、復興を加速させ、都市力の向上、交流・定住人口の拡大を目指す。


c 重点目標3 活力再生プログラム

 農業・商業・工業・観光産業の関係機関や団体との連携を強化することにより、原子力災害に起因する風評被害を払拭し、地産地消を推進するとともに、(独)産業技術総合研究所や福島県医療機器開発・安全性評価センター(現ふくしま医療機器開発支援センター)を起爆剤とした関連企業等の誘致や地場産業への支援を強化し、地域経済の活性化と安定した雇用の創出を目指す。また、再生可能エネルギーの導入や省エネルギーの推進に積極的に取り組むとともに、同研究所や高等教育機関等との連携を図り、新たなエネルギー社会の構築を目指す。

 次に新たな大綱を含めた計画の体系であるが、大綱1・2は前期基本計画当時と同様である。大綱3では前期においては3であった基本施策に含まれていた子育て環境の充実を独立させるかたちで、「元気な笑顔がはじけるまち」を新たな基本施策として加え4とした。大綱4・5では基本施策の文言の修正が行われたが、体系に変更はなかった。大綱6は基本施策「声を掛け合いながら安心して暮らせるまち」を「誰もが安全・安心に生活できるまち」に改め、施策「浸水対策の強化」を追加した。これは増加する集中豪雨への対応で、河川改修といった浸水対策の推進、ハザードマップの提供といった浸水情報の周知に関する施策を追加したものであった。

 そして新たな大綱7「手を取り合って明日を創るまち」は、大震災・原発事故からの一日も早い復旧・復興を目指し、市民が一丸となって推進するまちづくりを位置づけたものであった。基本施策は二つで、まず1.「力を合わせふるさとの再生に取り組むまち(原子力災害対応、市民生活の再生、次世代の育成)」では放射性物質の除染の推進、被災者の生活支援、子どもの徹底した健康管理等を施策としてあげた。2.「新たな開拓者の心で復興を果たすまち(産業の再生・発展と雇用の創出、防災体制の再構築、新たなエネルギー社会の構築)」では各種産業の再生・発展、防災体制の強化、再生可能エネルギーの導入促進等の施策を示した。

 以上の三つの重点目標の設定、新たな大綱の追加という基本構想における特徴を持つ後期基本計画を推進し、第五次総合計画は2018(平成30)年3月で完了した。その評価は次期の総合計画である、郡山市まちづくり基本指針において記述されている。それによると大震災・原発事故、あるいは国の「地方創生」の動きに伴う郡山市人口ビジョン及び郡山市総合戦略の策定といった環境変化をふまえた上で、2009(平成21)年度から郡山市が行っている市民意識調査の結果から見れば、郡山市を「住みやすいまち」と回答している市民が概ね74〜76%を堅持していると評価した。

 また、郡山市では数値目標として各大綱に基本指標を定め、目標値に対する達成状況を評価していることをあげ、全140指標のうち約32%にあたる45指標が目標値を達成、目標は達成しないものの成果が向上した指標も含めると、全体の約63%にあたる88件の指標が第五次総合計画の開始時点(2006(平成18)年度)と比べて向上したと述べた。したがって、各分野での事業推進の成果がある程度見られたものと評価した。

 しかし、少子高齢・人口減少社会の進展の影響もあり、各分野での市主催事業や商店街でのイベント等の参加者数に減少傾向が見られたことを指摘。他にも小売業・卸売業等の商品販売額といった郡山市の経済活動を示す指標や、ボランティア活動団体数、町内会加入率などコミュニティの結びつきを示す指標に減少傾向が見られるなど、今後の取り組みに向けた課題も指摘した。