国際連合は、1975(昭和50)年を「国際婦人年」と定め、第1回国際婦人年世界会議(世界女性会議)をメキシコシティで開催し、「世界行動計画」を採択した。また、1976(昭和51)年から「国連婦人の十年」がスタートし、1979(昭和54)年第34回国連総会で、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(女性差別撤廃条約)が採択され、世界各地で男女平等をめざす活動が活発に展開されることとなった。
日本においては、1977(昭和52)年、今後10年間の女性問題の課題及び施策の方向を明らかにする「国内行動計画」を策定し、1985(昭和60)年には、女性差別撤廃条約を批准し、勤労婦人福祉法(昭和47年法律第113号)を改正する形で「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」(現雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律、男女雇用機会均等法)が成立した。1991(平成3)年、「育児休業等に関する法律」(平成3年法律第76号、現育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律、育児・介護休業法)が制定され、1999(平成11)年には、男女共同参画社会の形成に関する取り組みを総合的かつ計画的に推進するため「男女共同参画社会基本法」(平成11年法律第78号)が制定された。2000(平成12)年、同法に基づき「男女共同参画基本計画」(2001(平成13)年度から2005(平成17)年度)が策定され、2020(令和2)年の「第5次男女共同参画基本計画」(2021(令和3)年度から2025(令和7)年度)まで引き継がれている。
福島県においては、1983(昭和58)年に「婦人の地位と福祉の向上のための福島県計画」を、1994(平成6)年に「ふくしま新世紀女性プラン」を策定し、2001(平成13)年には、男女共同参画社会の実現に向けての実践的活動拠点として「福島県男女共生センター 女と男の未来館」を開設し、国の男女共同参画基本計画を踏まえ、「ふくしま男女共同参画プラン」(2001(平成13)年度から2010(平成22)年度)を策定した。同計画は、2021(令和3)年まで数度の改定を経て、2022(令和4)年度から2030(令和12)年度までを期間とする現計画に引き継がれている。2002(平成14)年には、「福島県男女平等を実現し男女が個人として尊重される社会を形成するための男女共同参画の推進に関する条例」(平成14年福島県条例第17号)が制定されている。
郡山市は、1992(平成4)年、教育委員会事務局に「女性企画室」を設置し、翌年「郡山市女性行動計画」を策定し、1995(平成7)年の「郡山市第四次総合計画」には、男女がともに進める地域社会の創造を掲げた。同年から、男女共同参画情報誌「シンフォニー」の全戸配布が開始され、以来、年2回発行されてきた。同誌は、人権尊重、男女共同参画、女性活躍推進に関する様々な情報を市民に提供し、啓発活動の一翼を担ってきた。2001(平成13)年、男女共同参画社会基本法の趣旨を踏まえ、「―女と男(ひととひと)がきらめくまち―こおりやま男女共同参画プラン」(2002(平成14)年度から2009(平成21)年度)を策定した。2002(平成14)年、組織改編により市長部局である市民部に「男女共同参画課」を設置し、男女共同参画推進の拠点として、福島県内市町村では初となる「男女共同参画センター(さんかくプラザ)」を開設した。さらに、「自分を認め 相手を認め すべての人がともに歩むまち それが 未来の夢をひらくまち“こおりやま”です」と謳う「郡山市男女共同参画都市」を宣言し、第1回男女共同参画フェスティバルを開催した。
2003(平成15)年には、「この条例は、男女共同参画の推進について、基本理念を定め、市、市民及び事業者の責務を明らかにするとともに、男女共同参画の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、男女共同参画を総合的かつ計画的に推進し、もって、市民一人一人が性別にかかわらず、その人権が尊重され、あらゆる分野において平等な、豊かで活力ある『男女共同参画のまち郡山』の実現を図ることを目的とする」と定める「郡山市男女共同参画推進条例」(平成15年郡山市条例第13号)を制定し、郡山市男女共同参画審議会を設置した。条例第3条は、1.人権の尊重、2.男女の個性に応じた主体的な生き方への配慮、3.政策・方針決定過程への男女共同参画、4.家庭生活と地域、職場、学校等の活動との両立、5.生涯にわたる心身の健康、6.国際的協調の六つの基本理念にのっとり男女共同参画は推進されなければならないとする。2006(平成18)年、新たな課題へ対応するため、プランの中間見直しとして「こおりやま男女共同参画プラン改訂版」(2006(平成18)年度から2009(平成21)年度)を策定した。さらに、プラン改訂版による取り組みの評価と検証を行い、課題を整理し、「第二次こおりやま男女共同参画プラン」(2010(平成22)年度から2017(平成29)年度)を策定し、男女共同参画社会の形成に取り組んできた。
2014(平成26)年、内閣府地域女性活躍加速化交付金を活用し、あらゆる分野における女性活躍推進に向けた地域ぐるみの取り組みを支援するため、市内の関係団体及び機関、企業等と連携して、「こおりやま女性の活躍推進ネットワーク会議」を発足させ、経営者等の意識の醸成や女性の意識改革、女性の登用を支援するネットワークの構築、セミナー・講演会の開催などの事業を実施することとした。
2016(平成28)年、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号、女性活躍推進法)の完全施行を記念して「女性活躍推進フォーラム(村木厚子氏講演会)」を開催し、あらゆる分野の女性の参画を推進するため内閣府が設置した「理工系女子応援ネットワーク会議」に、中核市としては全国で初めて参加登録を行い、小学5、6年生と中学生を対象とする「目指せ!理工系女子バスツアー」を実施した。
第二次プランが2017(平成29)年度で終了することから、2016(平成28)年に、「男女共同参画に関する郡山市市民意識調査・女性活躍推進に関する事業所調査」及び「男女共同参画に関する市民意見交換会」を実施し、また、パブリックコメントや郡山市男女共同参画審議会からの意見を反映させ、関係法令や市の関係計画等との整合性を図り、2017(平成29)年、「第三次こおりやま男女共同参画プラン」(2018(平成30)年度から2025(令和7)年度)を策定した。市民意識調査では、「男性が優遇されている」、「やや男性が優遇されている」と考えている人が全体の73.9%を占め、「男女平等」と考えている人の17.4%を大きく上回っており、さらなる施策展開の必要性が明らかにされた。また、男女別就業割合(2016(平成28)年度)をみると、郡山市の30代以降の女性の就業割合は男性に比べ低く、40代女性の就業割合がその前後の年代と比べ低く、M字型カーブがみられ、結婚や出産等を理由に離職する女性が多いこと、さらに、市県民税の課税状況(2017(平成29)年度)をみると、男性の平均課税額が235,686円であるのに対し、女性の平均課税額は113,610円と男性の5割にも満たない額となっており、男女の経済格差解消に向けた女性のエンパワーメントが必要である状況が確認された。国においては、2014(平成26)年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(平成13年法律第31号、DV防止法)の改正、2015(平成27)年に女性活躍推進法の制定、2016(平成28)年には育児・介護休業法の改正がなされ、福島県においても、2017(平成29)年にふくしま男女共同参画プランが改定されていたことから、これらとの整合性を図ることが求められていた。
同プランは、「郡山市まちづくり基本指針」の部門計画で、郡山市男女共同参画推進条例第10条に規定する「男女共同参画の推進に関する基本計画」としての位置づけを持つもので、男女共同参画社会基本法第14条第3項に規定する「市町村男女共同参画計画」に対応した計画である。また、DV防止法第2条の3に規定する「市町村基本計画」及び女性活躍推進法第6条に規定する「市町村推進計画」を兼ねる計画である。同プランは、1.ジェンダーの視点の反映と多様な価値を尊重し、男女平等を実現できる社会づくり、2.誰もが人権を尊重され、「自分らしく」安心して共生できる地域づくり、3.女性のエンパワーメントの促進とあらゆる分野で市民が活躍できる環境づくりという三つの視点を取り入れ、1.男女平等を基本とした男女共同参画社会の実現、2.すべての市民が人権を尊重される環境づくり、3.あらゆる分野における女性の活躍の促進、4.仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の推進、5.安全・安心な暮らしの実現の五つの基本目標を掲げ、目標を達成するための課題、施策の方向で構成されている。
2002(平成14)年から開催されてきた男女共同参画フェスティバルについては、2019(令和元年)、「男女共同参画フェスティバル2019」として、講演会、男女共同参画川柳コンクール、各種の市民自主企画イベント、さんかくプラザ活動団体の活動成果発表展示やふれあい発表会等が行われ、多数の市民が参加した。2020(令和2)年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、男女共同参画川柳コンクール、市民自主企画1団体、活動成果発表展示1団体のみとなったが、2021(令和3)年は、オープニングアトラクションや講演会の配信、オンラインによる地域クラウド交流会、各種講座の配信等、コロナ禍においても工夫を凝らして実施された。
男女共同参画推進事業者表彰は、働きやすい職場環境づくりや女性活躍推進等に積極的に取り組んでいる事業者を表彰し、各事業者の取り組みを市民に広く周知し、女性の活躍推進等に関する意識啓発を図るため、2004(平成16)年から実施されてきた事業であり、2021(令和3)年度は7事業者が表彰され、2021年度末までに、市内65の事業者が表彰されている(2025(令和7)年度目標値は80事業者)。
2014(平成26)年に発足した「こおりやま女性の活躍推進ネットワーク会議」は、各種団体によるネットワーク会議の開催や、対象別や目的別のセミナーを行い、女性の資質向上を図るとともに、世代・業種を越えて交流できる情報交換の場を設けることで、女性の働き方を「見える化」させ、自ら進んで能力を向上させる技術を学ぶ機会を提供してきた。2021(令和3)年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、会員が一堂に会しての事業の実施は困難であったが、オンラインを取り入れながら、52団体が参加し、意見交換会やセミナーを開催した(郡山市『郡山市公式ホームページ』「こおりやま女性の活躍推進ネットワーク会議について」<https://www.city.koriyama.lg.jp/site/jokatsuportal/6236.html>参照2024年10月22日)。
プランの基本指標の一つとされている市県民税の男女の平均課税額の差についてみると、プラン策定時の2017(平成29)年度の女性の平均課税額は男性の約48%であったが、2021(令和3)年度の平均課税額は、男性230,498円、女性115,821円と、その差額は114,677円であり、女性は男性の約50%であることから、プラン策定時と比較し、差は約2%減少している。
市職員における管理的地位(課長相当職以上)に占める女性職員の割合は 2021(令和3)年度は9.0%となり、プラン策定時よりは低下しているが、前年度と比較すると2.1%上昇した。女性昇格者については、「係長相当職以上」に占める女性職員の割合は26.8%となっており、年々割合が上昇している。近年、新規採用者に占める女性の割合が高いこと等により、全職員に占める女性職員の割合は38.5%と増加傾向にある。また、市職員における男性の育児休業取得率をみると、子育て支援制度をまとめた「パパママ応援手帳」の作成・啓発の結果、2021(令和3)年度の実績は過去最高の20.6%となった。さらなる育児休業取得を促すため、2025(令和7)年度末の目標値を30%に引き上げ、ワーク・フォー・ライフの実現に向け取り組みを進めることとされている。郡山市の男女共同参画政策については、行政と市民・団体等との連携の場が適宜設けられることにより、着実に成果を上げているといえよう。