a 連携中枢都市圏構想
連携中枢都市圏構想は、国が第30次地方制度調査会「大都市制度の改革及び基礎自治体の行政サービス提供体制に関する答申」を踏まえて、2014(平成26)年度に地方自治法を改正し制度化した、地方自治体間の柔軟な連携を可能とする広域連携の仕組みである。
人口減少・少子高齢社会にあっても、地域を活性化し、経済を持続可能なものとし、住民が安心して快適な暮らしを営んでいけるようにするため、相当の規模と中核性を備える圏域の中心都市が近隣の市町村と連携して「一定の圏域人口を有し活力ある社会経済を維持するための拠点」を形成することを目的としている。
連携中枢都市圏においては、圏域全体の経済をけん引し圏域の住民全体の暮らしを支えるという観点から、次の三つの役割を果たすことが求められている。
【圏域全体の経済成長のけん引】
取組例:産学金官民一体となった経済成長の推進体制の構築、新規創業の促進及び地域産業の振興、地域資源を活用した地域経済の裾野拡大、戦略的な観光施策の推進など
【高次の都市機能の集積・強化】
取組例:高度な医療サービスの提供、高度な中心拠点の整備・広域的公共交通網の構築、高等教育・研究開発の環境整備など
【圏域全体の生活関連機能サービスの向上】
取組例:地域医療・福祉・子育ての充実、教育・文化・スポーツの振興、広域的な土地利用の促進、地域振興、災害対策・住民の安全安心確保、環境対策の推進、地域公共交通の充実、ICTインフラの整備、道路等の社会インフラの整備・維持、地域の生産者や消費者等の連携による地産地消、圏域内外の住民との交流・移住促進、圏域マネジメント能力の強化など
本市では、2015(平成27)年度の総務省が進める「新たな広域連携促進事業」の委託団体として採択されたことを契機に、近隣市町村と連携中枢都市圏形成に向けた協議を重ね、2017(平成29)年に初の市町村長会議を開催し、その後の「連携中枢都市宣言」、連携協約締結を経て、こおりやま広域連携中枢都市圏(こおりやま広域圏)を形成し、都市と自然が調和した働きやすく暮らしやすい環境を目指し、各種連携事業に取り組んでいる。
b こおりやま広域連携中枢都市圏ビジョン
連携中枢都市圏は、地域の実情に応じた行政サービスを提供するために市町村が柔軟に連携しこれまでの結びつきをさらに発展させ、人口減少・少子高齢社会にあっても、活力ある地域経済を維持するとともに、住民が安心して快適な暮らしを営むことができる圏域形成を目的としており、主体的なまちづくりの理念と課題を踏まえた将来展望実現に向け、連携して推進する相互に資する具体的な取組を示すものとして、2019(平成31)年3月に「こおりやま広域連携中枢都市圏ビジョン」を策定した。
同ビジョンでは、主体的なまちづくりの理念と課題を踏まえた将来展望実現に向け、広域的に学び、働き、暮らし続けることができる圏域づくりを五つの基本的な考え方により推進することとしている。
1. 災害発生時はもとより、平時においてもお互いの強みを「広め合う、高め合う、助け合う」関係を構築し、持続可能な圏域形成を目指す。
2. 多様かつ高度な産業研究機能集積を生かし、圏域内の公・共・私の境界を越えた主体的な研究連携を促進するとともに、国際的な視野にも立った広域産業圏として更なる発展を目指す。
3. 圏域の未来を担う若い世代、次の世代が十分に力を発揮できる機会と場を創出し、先人の知恵にも学びつつ、全世代参画型の将来展望と課題解決策を構想する。
4. 本圏域の発展が、より広域な国や県全体の発展に寄与するよう、IoT、AI等も活用した先駆的かつモデル的な連携事業を推進する。
5. 地方自治の本旨である、圏域内の各自治体による団体自治と住民自治との有機的連携の下、ビジョンの実現に取り組む。
c 圏域の概要
こおりやま広域圏を構成する17市町村(郡山市、須賀川市、二本松市、田村市、本宮市、大玉村、鏡石町、天栄村、磐梯町(注1)、猪苗代町、石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町、三春町、小野町)は、福島県の中央部に位置し、人口は約62万9,000人(2020(令和2)年国勢調査)で福島県内の人口の約3分の1を占めており、面積は約3,373平方キロメートルで福島県の約4分の1を占めている。圏域の北部は福島市、北塩原村等と接し、西部は会津若松市や下郷町、南部は矢吹町や白河市、西郷村、東部はいわき市や葛尾村、浪江町、大熊町、川内村等と接している。
また、東北を南北に貫く国道4号、東北自動車道、東北新幹線、東北本線と、日本海側と太平洋側を結ぶ国道49号、磐越自動車道、磐越東線、磐越西線や、本市から茨城県水戸市を結ぶ水郡線の結節点や、県内唯一の空港である福島空港を有し、古くから人・モノ・情報が行き交う交通の要衝となっている。
d 圏域形成後の主な動き
広域圏の連携中枢都市である本市は、2019(令和元)年7月に「SDGs未来都市・モデル事業」に選定され、8月にはSDGsの推進に資する取組や、「経済」「社会」「環境」三側面での自治体SDGsモデル事業の推進のため「郡山市SDGs未来都市計画」を定め、こおりやま広域圏における連携事業として、「全世代健康都市圏」を目指すものとした。
また、2019(令和元)年12月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」においては、地方における人口の急減、高齢化率のさらなる上昇、東京圏への一極集中に伴う弊害の拡大が今後の見通しとして指摘されていることや、同年12月20日に閣議決定された第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、SDGsや5G(注2)、Society5.0(注3)などの新しい時代の流れを力にするとともに、「連携中枢都市圏」などによる地域の実情に応じた連携・協働の促進が地方創生において重要であることが示されたことを踏まえ、郡山市人口ビジョン及び総合戦略の改訂にあたり、広域連携による圏域の強みを生かした地方創生を推進することとした。
2019(令和元)年10月に発生した「令和元年東日本台風」による被害は、阿武隈川が縦断する本圏域において広範囲にわたる甚大な被害を及ぼした。この際に実施された圏域内相互支援を契機として、「こおりやま広域圏対口支援(注4)」のスキームを迅速に形成し、地球温暖化に伴い広域化・激甚化する自然災害に対する流域治水と地域防災力向上に向けた連携を一層効果的なものとした。
今後も、社会経済情勢の変化や国等の動向にも柔軟に対応しながら、広域圏市町村相互の「自助・共助(互助)・公助」を原則とした支援体制を強固なものとし、未来からのバックキャストにより、誰一人取り残されないSDGsの理念を浸透させ、子どもやZ世代を含む若者から高齢者まで全世代・全員活躍型「こおりやま広域圏」について、一層の連携のもと課題解決に取り組んでいく。
注1. 磐梯町は2022(令和4)年2月7日に連携協約を締結。
注2. 5G:5th Generation の略語。第5世代移動通信システム。IoT時代に対応した高速で遅延の少ない方式。
注3. Society5.0:狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、新たな社会。
注4. 対口支援:被災した自治体のパートナーとして特定の自治体をあらかじめ決めて職員を派遣する方式。