我が国においては、高度経済成長期に、人口増加と都市化を見据え、多くの公共施設やインフラの整備が行われてきたところであるが、本市もこの流れに違わず、市民ニーズに応える形で公共施設等を整備してきた。
これら公共施設等の老朽化は、時間の経過により確実に進行するものであるが、2012(平成24)年12月に中央自動車道笹子トンネルで発生した天井板落下事故などによって、利用者の生命や財産に重大な影響を与える看過できない現実として、関係者のみならず広く国民に強く認識されたところである。
このような中、国は「経済財政運営と改革の基本方針~脱デフレ・経済再生~」(2013(平成25)年6月14日閣議決定)において、インフラの老朽化が急速に進展する中、インフラの運営、更新等に当たっては「新しく造ること」から「賢く使うこと」への重点化が課題であるとの認識を示すとともに、「日本再興戦略-JAPAN is BACK」(同閣議決定)において、国・地方を含めた全分野にわたる長寿命化計画を策定する方針を示した。
その後、国は2013(平成25)年11月に策定したインフラ長寿命化基本計画において、国の各府省におけるインフラ長寿命化計画(行動計画)と個別施設ごとの長寿命化計画(個別施設計画)の策定のほか、計画に基づく点検の実施と点検結果を踏まえた適切な措置の実施を定め、地方自治体においても国の動きに呼応する措置をとることが期待された。
そして2014(平成26)年4月には総務省から通知が発出され、各地方公共団体は計画策定指針に基づく速やかな計画策定が要請されたところである。
a 郡山市公有資産活用ガイドラインと郡山市公共施設等総合管理計画
厳しい財政状況が続く中、少子高齢化等による公共施設等の利用需要の変化が予想されることは本市においても例外ではなく、今後の公共施設等の維持管理や改修・更新はもとより、統廃合や資産活用等のあり方について抜本的な見直しが必要であるとの認識のもと、2013(平成25)年11月に財務部管財課内に公有資産活用室が設置された。翌2014(平成26)年4月に、管財課は公有資産マネジメント課に改編され、公共施設等総合管理計画に関する事務はもとより、公有資産の総合企画及び調整並びに有効活用の推進、公共施設の保全指導等を所掌することとなり、同年12月には、適正な行財政運営に努めるとともに、行財政改革を推進し、未利用財産の処分や資産の有効活用に取り組みを加速化させ、限られた財源の中で、持続可能な行財政運営を進め、公益性・公平性・有効性・効率性を柱とした資産の有効活用を推進することを基本的な考え方とする「郡山市公有資産活用ガイドライン」を策定した。
また、公有資産の有効活用を効率的・効果的に実践していくために進捗状況を適切に管理することが必要であり、公有資産に関する情報を共有の上、財産の処分や資産の有効活用について多角的に検討し、年度ごとに取り組みの結果とその成果を検証し、問題点や課題に対する検討を行う体制として郡山市公有資産活用調整会議を設置したところである。
公共施設等総合管理計画は、2014(平成26)年度から策定業務に着手し、外部有識者等の意見を取入れながら、2016(平成28)年3月に策定した。主な計画検討経過は、表1のとおりである。計画期間は、公共施設等のマネジメントが中長期に及ぶことを考慮して2016(平成28)年度から2045(令和27)年度までの30年間としている。
時期 | 内容 |
---|---|
2014(平成26)年9月 | まちづくりネットモニター調査の実施 |
2014(平成26)年12月 | 郡山市公有資産活用ガイドライン策定、公表 |
2015(平成27)年1~3月 | 市民アンケートの実施 |
2015(平成27)年3月 | 郡山市公共施設白書の発行 |
2015(平成27)年7月~ 2016(平成28)年2月 |
郡山市公共施設等総合管理計画策定検討委員会開催(計5回開催) |
2015(平成27)年12月~ 2016(平成28)年1月 |
郡山市公共施設等総合管理計画素案の公表 |
パブリックコメントの実施 | |
2016(平成28)年1月19日 | 公共施設シンポジウムの開催 |
基調講演:公共施設老朽化と更新問題の危機的状況 | |
東洋大学経済学研究科客員教授 南 学氏(職名は開催当時) | |
2016(平成28)年3月 | 郡山市公共施設等総合管理計画策定 |
郡山市公共施設等総合管理計画は、本市公共施設等マネジメントの基本方針を定めるものであり、今後必要となる公共施設等の改修・更新費用の推計額を踏まえ、公共施設等のサスティナビリティを確保するための目標値を設定している。特に、普通会計における試算では、今後30年間(2045(令和27)年度まで)の更新費用総額を5,193億円、財政計画の推計による投資可能額を4,122億円としている。その結果、不足額は1,071億円となるが、その対策として施設の長寿命化による更新費用の縮減目標値を901億円、公共施設等の複合化や集約化、廃止等による総量縮減の目標値を170億円と掲げたところである。また、総量縮減の取り組みは計画策定から10年間での達成を目指しており、公有資産の活用や維持管理費の縮減の成果も含めるとしている。
b 郡山市公共施設等総合管理計画個別計画
郡山市公共施設等総合管理計画において、施設類型ごとの具体的な方針は個別計画において示すこととし、公共施設等総合管理計画の見直しは、原則10年ごとに行うこととしたことから、その見直しに合わせ、個別計画の計画期間は2018(平成30)年度から2025(令和7)年度までの8年間としている。
なお、個別計画の主な策定経過は、表2のとおりである。
時期 | 内容 |
---|---|
2016(平成28)年4月 | 公有資産活用調整会議において本市公共施設等総合管理計画個別計画策定方針を協議 |
2016(平成28)年5月 | 公有資産活用調整会議に作業部会を設置 |
2017(平成29)年9~10月 | 住民説明会を開催し計画原案を説明 (市内15ヵ所で計16回開催) |
2017(平成29)年12月~2018(平成30)年1月 | 郡山市公共施設等総合管理計画個別計画素案の公表 |
パブリックコメントの実施 | |
2018(平成30)年2月 | 庁議においてパブリックコメントの結果報告及び計画策定に関する協議を実施 |
2018(平成30)年3月 | 郡山市公共施設等総合管理計画個別計画策定 |
本市公共施設等総合管理計画及び個別計画の進捗管理は、郡山市公有資産活用調整会議において、毎年度PDCAサイクルにより進捗管理を行うこととされ、特に施設の設置や統廃合等に当たっては、同会議において協議し調整を図ることとした。
個別の施設に係る長期的な方向性(施設方針)の検討については、2025(令和7)年度までに築50年に達する施設を優先し、当該施設又は近隣施設の改修等の時期に合わせて検討開始年度が定められ、2021(令和3)年度末時点における検討状況は、表3のとおりである。
区分 | 施設数 | |
---|---|---|
検討中の施設 | 451 | |
(内訳) | 2017(平成29)年度から継続検討中 | 18 |
2018(平成30)年度から継続検討中 | 339 | |
2019(令和元)年度から継続検討中 | 7 | |
2020(令和2)年度から継続検討中 | 58 | |
2021(令和3)年度から継続検討中 | 2 | |
計画を前倒しして検討開始 | 27 | |
令和3年度までに方針決定した施設 | 231 |
c 集約化に関連する特色ある取組
・熱海多目的交流施設整備事業等
2017(平成29)年1月に社会資本総合整備計画(熱海地区都市再整備計画)を策定し、行政センター・公民館・図書館分館を磐梯熱海駅前の市有地に移転し、併せて観光案内や物産品販売等を行う施設と住民交流のためのコミュニティ施設を一体的に多目的交流施設として整備し、行政サービスの提供と観光物産の振興、地域内交流の促進を図るとともに、多目的交流施設に隣接する施設として、フットボールセンターを整備し、一体的な交流拠点の整備を図ることとした。計画期間は、2016(平成28)年度から2020(平成32)年度までとした。
2018(平成30)年5月1日に熱海フットボールセンターが供用を開始し、同月14日に多目的交流施設として、熱海行政センター、中央図書館熱海分館、熱海公民館、磐梯熱海観光物産館が供用を開始した。
・西田学園義務教育学校整備事業
2013(平成25)年8月、西田地区小学校統合を促進する会、西田町区長会の連名により、西田地区小学校統合を促進する要望書が市及び教育委員会、市議会に提出された。地元説明会、学校教育審議会、郡山市議会公有資産活用検討特別委員会等の審議を経て、2016(平成28)年9月に、郡山市議会9月定例会の提案理由において、県内初の義務教育学校として、2018(平成30)年4月の開校を目指し(仮称)郡山市立西田学園義務教育学校を整備することを表明した。
この整備により、高野小学校、鬼生田小学校、三町目小学校、大田小学校、根木屋小学校及び西田中学校が廃校となり、西田中学校敷地に小学校校舎を増築するなどして、西田学園義務教育学校が完成し、2018(平成30)年4月1日に開校した。
・郡山市歴史情報博物館施設整備事業
2020(令和2)年8月に、都市再生整備計画(麓山地区)を策定し、市内各所に分散している文化財関係施設を適切に集約化するとともに、本市の歴史・文化遺産の情報発信と次世代継承の拠点となる郡山市歴史情報博物館を新たに整備し、地域の歴史・文化遺産をつなぐ回遊促進による交流と賑わい創出を推進することで、「歴史と緑の生活軸」、さらには将来都市構造「郡山型コンパクト&ネットワーク都市構造」の形成を目指すこととした。計画期間は、2020(令和2)年度から2024(令和6)年度までとした。