(3) 復興基本方針と除染実施計画

 甚大な被害からの再生を確実に進めるため、市は「郡山市復興基本方針」を2011(平成23)年12月策定し、除染による生活環境の再生や被災者の生活再建をはじめとした諸施策を実行した。復興基本方針は、「市民の立場と視点で行う復興」等五つの基本理念を置き、復興推進期間を第五次総合計画の周期に併せ7年間(2017(平成29)年度まで)と定めた。重点施策として、「原子力災害対応」、「市民生活の再生」、「産業の再生・発展と雇用の創出」、「防災体制の再構築」、「新たなエネルギー社会の構築」の五つが示された。2013(平成25)年2月には、2011(平成23)年及び2012(平成24)年の動きを整理した『東日本大震災 郡山市の記録』が発行された。

 放射線の影響を心配しながら避難の選択をしなかった市民の関心事は、子どもの生活環境の安全であった。市は2011(平成23)年4月から県内自治体に先駆けて小中学校校庭及び保育所所庭等の表土除去に既に着手していた。復興基本方針と同日に初版が策定された「郡山市ふるさと再生除染実施計画」は、市民との協働により取り組むこと、除染費用は全額を国、東京電力に求償することを基本方針とした。取り組みの重点期間は2013(平成25)年8月末までとされた。市民の生活環境の年間追加被ばく線量を2011(平成23)年8月末と比べ約50%に減少させること、特に子どもの生活環境は約60%減少させることが目指された。

 2014(平成26)年12月にはすべての小中学校で空間放射線量が0.23μ㏜/hを下回った。2016(平成28)年度には一般住宅等の除染が終了し、2017(平成29)年度には農地、道路及びため池の除染が終了した。除染実施計画は第6版(2017(平成29)年3月)まで改定されている。

 『郡山市の原子力災害対策 第17版』によれば、2011(平成23)年3月29日の市役所における空間放射線量に対する2021(令和3)年11月30日時点の低減率は95.3%であり(0.12μ㏜/h)、年間追加被ばく線量を1mSv未満とする目標値(高さ1mで0.23μ㏜/h)を達成している。他方、森林の面的除染は、国の放射性物質汚染対処特措法に基づく除染の基本方針によって生活圏から20mの範囲に限定されているため、農産物のうち野生の山菜等の出荷制限は解除できない状況が継続している。