市は、原子力災害対策の推進体制強化のため、組織改編を行った。除染、損害賠償、総合相談等の原子力災害対策の総合調整は、2011(平成23)年10月より原子力災害対策直轄室が所管した。その後、2013(平成25)年11月に生活環境部に原子力災害総合対策課が設置された。除染事業や損害賠償相談のほか、空間放射線量測定器や個人積算線量計の貸出、原子力災害対策アドバイザー等による各種啓発・情報提供、放射線量モニタリングマップの作成・公表、可搬型モニタリングポスト及びリアルタイム線量測定システムの設置等が実施された。
2011(平成23)年4月、市は国の対応に先行して校庭の表土除去作業を実施したが、作業で発生した汚染土壌は、市の見込みとは異なり、最終処分場に搬入することはできなかった。搬入が検討された市西部の埋立処分場の周辺住民は、持ち込みに強く反対した。また、除去土壌をまとめて一時保管する仮置き場の設置には、他自治体と同じく、市と住民との調整に困難が伴った。このため、大熊町及び双葉町の福島第一原子力発電所に近接した地域に国が整備した中間貯蔵施設に搬入されるまでの間、除去土壌は主に現地で地下埋没により一時保管する方針とされた。2014(平成26)年8月には建設交通部に道路除染推進課を設置し、効率的な発注形態や除染工程が確立された。同年10月には、仮置き場の設置及び除去土壌の輸送を推進するため原子力災害総合対策課内に搬出係が設置された。
保健所は、ホールボディカウンタによる内部被ばく検査や自家消費野菜等の放射線検査を行うため、放射線健康管理センターを2012(平成24)年4月に設置した。その後、放射線健康管理課(2013(平成25)年11月~2021(令和3)年3月)に改組された。2021(令和3)年度までに県の実施分と併せ延べ180,203人の市民の内部被ばく検査が実施された。人体の組織に取り込まれた放射性物質の影響を評価する基準である預託実効線量は全員1mSv未満であった。
2014(平成26)年4月、総務部総務法務課に避難者支援係を設置した。避難指示区域から市への避難者と、市から市外への区域外避難者に対する支援を一本化し、窓口を明確にすることを目的とした対応であった。
東日本大震災及び原子力災害の影響は、市民の生活領域全般に及ぶものであった。このため市の対応は、改組された特定の部局の業務にとどまるものではなく、市民の暮らしの回復に向けて全庁的にあらゆる部局で展開されていった。そのすべてをここに記載することはできないが、実施された業務の端的な記録は各年度の事務報告書に記録されている。