地域防災計画は災害対策基本法改正等を受けて修正されることが多いものであるが、市では東日本大震災及び同年9月台風被災の教訓も反映し、この間に諸点の改定が行われた。
原発事故前の郡山市地域防災計画、第3章 災害予防計画、第5節 特殊災害予防計画、第4項には、原子力発電所事故等の対応が規定されていた。これは、1999(平成11)年9月30日の茨城県東海村JCO核燃料加工施設臨界事故を受けて2001(平成13)年3月に福島県原子力防災対策が見直されため、郡山市地域防災計画が対応したものであった。重点地域以外にも県から市へ空間放射線量率等の情報が提供されるため、市は市民の不安解消のために庁内関係各部に情報提供すること、また、保健所でスクリーニング及び健康相談等に対応することが定められていた。
2012(平成24)年12月の定例市議会は、東日本大震災及び台風15号水害対策特別委員会が協議を重ねてとりまとめた郡山市地域防災計画に係る提言を議題とし可決した。15項目にわたる提言の第1点目は、計画の構成を見直し、「東日本大震災を起因とする福島第一原子力発電所事故を踏まえ、原子力災害等の対応については、新たな章をつくり詳細な予防計画を作成すること」であった。2013(平成25)年3月に郡山市地域防災計画は修正された。第3章第8節に原子力災害予防計画が加わり、情報の収集、災害発生時の対応体制の構築、放射線に関する学習機会の提供が規定された。また、第4章 災害応急対策、第28節 原子力災害応急対策計画には、初期対応及び応急対策が位置付けられた。応急対策として、原子力発電所関係周辺市町村の避難者の受け入れ等が定められた。
2015(平成27)年改定では、「暫定重点区域における福島県原子力災害広域避難計画」(2014(平成26)年4月)に基づき、郡山市地域防災計画内の第3章第8節の原子力災害予防計画の中に、避難元市町村との連携が加わった。原子力災害発生時には浜通り等の市町村住民が本市に避難する可能性があることから、平常時から当該市町村と連携を深めておくとともに、県等が実施する広域避難訓練に可能な範囲で協力するとされた。また、第4章第28節の原子力災害応急対策計画では、避難者受け入れの項目に、市施設における避難所開設及び運営等が加わっており、より具体的な受け入れ策が書き込まれたといえよう。
2020(令和2)年9月改定では、第4章第28節の原子力災害応急対策計画の中に、応急対策を実施する場合について、県内の原発周辺市町村のほか、茨城・新潟県内に屋内退避及び避難の決定が出された場合が追加された。また、2017(平成29)年8月に茨城県日立市と郡山市ほか県内15市町村の間で締結された、原子力災害時における日立市民の県外広域避難に関する協定を反映して、広域避難における避難者受け入れ対応が追記された。