郡山市は自らが地震と放射線被害の被災地でありながら、多数の避難者を受け入れる立場としても、未経験の対応を迫られた。
市の事務報告書は、2013(平成25)年4月より、原発避難者特例法に基づく指定13市町村から郡山市への避難者数を総務省全国避難者情報システム(避難者の任意届出)に基づいて掲載している。2013(平成25)年4月時点の市への避難者数は8,862人、2021(令和3)年度末は5,592人であった。避難者の多くは災害救助法に基づいて県から供与される応急仮設住宅に身を寄せ、時間の経過とともに各世帯の置かれた状況によって持家を避難先で再建したり、復興公営住宅に移転したり、避難指示解除後は避難元に帰還したり、避難指示解除との関係で決定される応急仮設住宅供与期間のあいだは、仮設住宅にとどまったりした。避難者の受け入れ市町村ごとに復興公営住宅の整理等の取り組み方針を整理した「長期避難者等の生活拠点の形成に向けた取組方針(郡山市-富岡町、大熊町、双葉町)」(2018(平成30)年3月30日改定、福島県・郡山市・富岡町・大熊町・双葉町・復興庁)には、2013(平成25)年9月5日時点における市への避難者の受け入れの状況が整理されている。市内6ヵ所に設置された建設応急仮設住宅や、応急仮設とみなして借上げた民間賃貸住宅等に約9,200人が生活し、主な避難元市町村の内訳は、富岡町が約3,100人、浪江町が約1,600人、川内村が約1,400人、大熊町が約950人、双葉町が約740人、南相馬市が約690人であった。
市は、富岡町、川内村、双葉町からの避難者を対象とした建設応急仮設住宅用地(南一丁目、緑ケ丘東七丁目、喜久田町早稲原)について、使用料等を免除して県に貸し付けた。2021(令和3)年12月末時点において、建設応急仮設住宅3戸への入居が継続している。借上げ住宅入居については、避難指示が残る大熊、双葉両町からの避難世帯の入居が継続している。なお、市内には、富岡町が主な役場機能を設置し(2017(平成29)年3月まで)、双葉町は支所を、大熊町は中通り連絡事務所を設置した。また、川内村は2012(平成24)年3月まで出張所を置いた。
避難者の受け入れに伴う市の財政負担は、2015(平成27)年度までは原発避難者特例法による教育・医療・福祉関係の特例事務等の実施に関して新たに生じる財政上の負担に対し、特別交付税による措置が講じられた。2016(平成28)年度からは前年度国勢調査人口をもとに、受け入れた避難者を含めた普通交付税措置が講じられた。