(2) 市民への住宅支援

 東日本大震災で被災し住宅が損壊した市民に対する住宅支援は、災害救助法に基づく応急修理、借上げ住宅の供与、市営住宅への仮入居としてまず実施された。2011(平成23)年度における支援実績は、住宅応急修理2,703件(2012(平成24)年3月受付終了)、借上げ住宅供与1,078件、市営住宅の仮入居34件であった。また、震災に伴い住宅に困窮する世帯に対しては、優先入居物件として市営住宅の募集が行われた。

 借上げ住宅の供与と市営住宅への仮入居の期限は、2017(平成29)年3月であった。借上げ住宅への入居件数は徐々に減少し、2012(平成24)年度は1,078件、供与最終年度であった2016(平成28)年度には525件であった。2017(平成29)年3月の支援終了に向けて、市は福島県と連携し戸別訪問等を実施した。市営住宅への仮入居は当初の34件から2016(平成28)年度には10件に減少した。

 また、前述のように復興交付金を活用し、被災者が入居できる復興公営住宅の整備が既存市営住宅の改修事業として実施された。市は既存ストックを有効活用し、早期に被災者に住宅を届ける政策判断を行ったといえよう。整備された90戸に対し、2014(平成26)年3月末時点における入居申込戸数は20戸であった。市内には、双葉郡からの避難者が避難元の町ごとにある程度まとまって暮らすことのできる県営復興公営住宅が2014(平成26)年11月以降新たに立地したが、市は、地震で被災した市民に対する新規の復興公営住宅は建設しないかたちで対応した点は、被災者の数やおかれた状況が大きく異なるとはいえ、政策対応として対照をなして市民の前に立ち現れた。

 市行政をはじめとした各種震災対応が市民の生活の回復にどのような効果をもつものであったのかについて、その一部を推論するために、最後に市民の住宅の再建状況について検討する。被災者生活再建支援法における被災者生活再建支援金には、住宅の再建方法に応じて支給される加算支援金がある。加算支援金には、建設・購入、補修、賃貸の3分類があり、最大で300万円が支給されるしくみとなっている。その給付状況を2019(令和元)年度までの数字で確認する(数字は福島県提供)。震災後の市民への累計給付数は約3,800件であった。加算支援金の年度ごとの分布をみると、震災後の2年間に7割の申請が集中していた。初年度の給付は補修が6割を占め、建設・購入は震災後3年間に累計件数の4分の3が集中した。全体でみると、約3,800件に占める割合は、建設・購入がもっとも多く42%、次いで補修が38%、賃貸は20%であった。震災からの復興過程は長きにわたるものであるが、被災者の生活の回復のためには、対応スピードと未来を見据えた適切な構想との両立が求められる。

(西田 奈保子)