(1) 新型コロナウイルス感染症の感染拡大

 2019(令和元)年12月31日、中華人民共和国(中国)政府は、湖北省武漢市における原因不明の新型肺炎の集団発生について世界保健機構(WHO)に報告した。発熱や呼吸困難を訴える市民が相次ぎ、2020(令和2)年1月9日、専門家グループは新型コロナウイルスが患者から検出されたと発表した。急速な感染拡大に対し、中国政府は、1月23日、武漢市を都市封鎖(ロックダウン)し、市民には厳しい移動制限が課された。1月30日、中国以外の国にも感染が広がり、感染者は9,692人、死亡者は213人となり、WHOのテドロス・アダノム事務局長は、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern)」に該当すると発表した。さらに、3月11日、テドロス事務局長は、世界的な感染拡大の状況、重症度等から「新型コロナウイルスは世界的な大流行(pandemic)と言える」と述べ、各国に対して対策の強化を訴えた。

 日本では、武漢市に滞在歴のある患者から新型コロナウイルス陽性の結果が得られたことを受け、2020(令和2)年1月16日、厚生労働省は国内で初めて患者が確認されたと公表した。1月28日、新型コロナウイルス感染症を「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成10年法律第114号、感染症法)の「指定感染症」とする政令が閣議決定され、2月1日以降、感染症法と「検疫法」(昭和26年法律第201号)により対処することとなった。「指定感染症」とは、既に知られている感染性の疾病であって、感染症法の規定を準用しなければ、疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。

 しかしながら、国内でも徐々に感染が広がり、また、2月3日に横浜に入港した大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」内の感染拡大があり、感染を抑えるためには「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(平成24年法律第31号、特措法)による対処が必要であるとされ、3月13日に同法を改正し、新型コロナウイルス感染症を新型インフルエンザ等とみなし、翌日から特措法を適用することとした。これにより、同法第32条第1項の対策本部長(内閣総理大臣)による「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」に基づき、外出自粛要請、興行場、催物の制限等の要請、指示といった措置をとることが可能となった。

 なお、1月30日、政府としての対策を総合的かつ強力に推進するため、内閣に新型コロナウイルス感染症対策本部が設置されていたが、特措法に基づくものではなかったことから、3月26日の閣議決定により、特措法第15条第1項の「新型インフルエンザ等対策本部」と位置づけられた。対策本部は、内閣総理大臣を本部長とし、内閣官房長官、厚生労働大臣、特措法に関する事務を担当する国務大臣を副本部長とし、その他のすべての大臣を本部員とするものとされた。


図3 感染者発生状況(第1波から5波:2020年3月~2021年11月)
出所:郡山市保健所(2023)『郡山市における新型コロナウイルス感染症対応白書』