(2) 新型コロナウイルス感染症への対応

 郡山市では、国内患者発生以降、保健所地域保健課感染症係を中心に各課との連携を図りながら対応を開始した。1月29日には、2014(平成26)年策定の「郡山市新型インフルエンザ等対策行動計画」に基づき、市長を本部長とし、関係部局長が本部員を務める郡山市健康危機対策本部会議を開催、新型コロナウイルス感染症に関する情報の共有を図るとともに、各部局の対応を確認した。2月20日には、「新型コロナウイルス感染症に係る市主催等イベント中止等及び市有施設の休館に関する指針」を策定し、民間団体へ指針の周知を図り、さらに、25日には、指針を改定し、不特定多数の参加者イベントの原則中止に理解を求めた。3月14日の市内初の感染者発生については、市長が記者会見において「市内感染者発生」を公表することとなった。

 3月26日、政府対策本部が特措法に基づく対策本部と位置づけられたことから福島県は既存の新型コロナウイルス感染症対策本部を特措法に基づく対策本部とすることとした。郡山市でも、3月27日、「郡山市新型インフルエンザ等対策本部条例」(平成25年郡山市条例第4号)に基づき、健康危機対策本部から新型インフルエンザ等対策本部に移行。4月7日の緊急事態宣言を受け、同日の第3回会議から、特措法第34条に基づく対策本部に移行。5月6日の第6回会議からは、郡山市コロナウイルス感染症対策本部会議と名称を変更し、6月8日の第9回会議以降、サブタイトルとして「~郡山市新しい生活様式推進本部会議~」を付すこととされた。同会議は、2021(令和3)年末まで、計25回開催され、感染症対策を総合的に推進する市の本部会議として機能することとなった。

 国は、2020(令和2)年2月25日、政府対策本部において「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」をまとめ、26日、国民に対し、大規模イベントの中止や延期、規模縮小等を要請し、27日には、春休みまでの間、すべての小学校、中学校、高等学校等に臨時休校を行うよう要請した。しかしながら、感染は収まらず、肺炎等の重篤な症例の発症頻度が高く、感染経路が特定できない症例が多数に上り、医療提供体制がひっ迫してきていることから、4月7日、政府対策本部長は、首都圏など7都府県を対象に、期間を5月6日までとする、特措法に基づく緊急事態宣言を発出した。密閉、密集、密接の三つの密を避けることが求められ、外出自粛要請と飲食店等に対する休業要請が行われた。16日には、緊急事態宣言の対象が全都道府県に拡大されたことから、福島県も宣言の対象となり、福島県教育委員会は、県立高等学校、中学校及び特別支援学校を臨時休業とすることとし、市町村立学校に対しても4月21日から5月6日まで臨時休業とするよう要請した。5月14日、感染が続く8都道府県以外の39県の緊急事態宣言は解除されたものの、市民の日常生活には大きな支障が生じ、学校教育の場においても混乱がみられ、感染症対策の難しさが明らかとなった。

 5月7日には、郡山市保健所4階大ホールに感染症対策の拠点を設置し、保健所全職員による各種対応班の編成を行い、保健所全体のコロナ対応体制を構築した。この間、首都圏への不急の移動及び感染拡大地域からの不急の帰省の自粛要請等を内容とする市長からのメッセージ発信、保健所におけるPCR検査の開始、帰国者・接触者相談センターの県内一本化、南東北第二病院における発熱外来診療所の開設など、着々と対策が進められ、2020年3月から6月までの第1波の間は、郡山市の感染状況は落ち着いていた。


図4 郡山市保健所4階大ホール 新型コロナウイルス感染症対策本部・総括業務調整班

 7月から11月の第2波においては、飲食店に関連した複数のクラスター(感染経路が判明している数人から数十人規模の患者集団)が判明し、市による関係者への積極的なPCR検査の実施等、クラスター対策が展開されることとなった。なお、2020(令和2)年4月7日の閣議で決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の一環として冷え込む観光需要を喚起するため7月から開始された「Go Toトラベル事業」については、経済効果があったとされる反面、感染拡大につながったとの批判もあり、感染症対策と経済政策とのバランスの難しさが指摘されることとなった。

 12月から2021(令和3)年2月までの第3波においては、年末年始に人の移動に伴う感染拡大がみられ、2月下旬からは、医療機関や福祉施設におけるクラスターが複数発生した。なお、国は、2月3日、特措法に「まん延防止等重点措置」を盛り込む改正を行い、特定地域における感染拡大を防止するため、政府が対象とした都道府県の知事は対象となる市区町村を限定することができるものとした。都道府県単位で行われてきた感染症対策について、地域の実情に応じ、きめ細やかに市区町村単位で実施する体制が整えられた。営業時間の変更要請や命令に応じない場合の過料も規定された。また、緊急事態宣言中の施設の使用制限要請や命令に応じない場合の過料についても規定された。さらに、国や地方公共団体は、営業時間短縮要請に協力した事業者等に対する支援や、医療機関及び医療従事者に対する支援のための財政上の措置をとることが規定された。同時に、感染症法や検疫法の改正も行われ、新型コロナウイルス感染症を「新型インフルエンザ等感染症」と位置づけ、入院措置や積極的疫学調査に応じない場合の過料も規定された。2021(令和3)年度の郡山市の組織改編により、感染症の予防や発生時に即応できる組織として、保健所において、地域保健課から管理係、感染症係、精神・難病係を移管し、保健・感染症課が新設された。

 3月から6月の第4波においては、市内で発生した中では最大となる医療機関のクラスターが発生し、保健所は対応に追われた。この医療機関のクラスターでは、病院職員、入院患者のほか、退院患者等を含む173人の感染が確認された。7月から11月の第5波においては、従来のアルファ株から感染力の強いデルタ株への置き換わりが進み、感染者が急増した。7月24日の福島県対策本部員会議において、郡山市は7月26日から8月15日までの期間「郡山市における新型コロナウイルス感染症集中対策」をとることとされ、市民には不要不急の外出自粛が、市内の事業者には20時から5時までの営業自粛等が要請されることとなった。さらなる感染拡大が続く中で、政府対策本部長より、郡山市は、8月23日から9月12日まで(最終的には9月23日まで)、特措法第31条の4(2021年2月3日改正時)に規定される「まん延防止等重点措置」の適用対象とされた。市民には20時以降の外出自粛を要請、飲食店の営業は5時から20時までとされ、併せて酒類提供の自粛を求め、大規模施設に対しては入場者制限や営業時間の短縮を要請することとなった。なお、郡山市の感染者総数は、2021(令和3)年12月31日までに2,066人にのぼった。

 郡山市は、2021(令和3)年1月12日に、郡山市新型コロナウイルスワクチン接種プロジェクトチームを発足させ、郡山医師会等と連携を図りながら、接種体制の整備に着手した。3月から、医療従事者及び高齢者を対象に先行接種が始まり、4月からは12歳以上の市民に対する接種が開始された。先の見通せないウイルスとの長期にわたる闘いを強いられてきた中で、ワクチン接種が動き出したことは、市民の間に一縷の望みをもたらすこととなった。

(藤野 美都子)