(3) 郡山市における工業の推移

 図3は、全国、福島県、郡山市における製造業事業所数、従業者数、製造品出荷額等の推移を、2012(平成24)年を100とする指数で示したものである。

 まず、事業所数の推移をみると、2016(平成28)年から2020(令和2)年まで、100の水準を下回るものの、2021(令和3)年には回復している。郡山市は、ほぼ全国と同様の推移をたどっているが、常に全国を上回る水準をキープした。

 次に、従業者数の推移をみると、全国と福島県がほぼ同水準で推移しているのに対して、郡山市は2015(平成27)年にかけて大きく低下し、2021(令和3)年においても100の水準を回復していない。


図3 郡山市における工業の推移(2012(平成24)年=100)

 製造品出荷額等の落ち込みは前2指標に比較して、より顕著である。郡山市で2015(平成27)年に90水準を下回るまでに低下し、一時的に回復したものの、2021(令和3年)年においても90水準にとどまっている。

 この背景には、日本たばこ産業(JT)の戦略が大きく影響している。日本たばこ産業(JT)は、高齢化や健康意識の高まり、消費税増税による消費規模の縮小に対応して、2015(平成27)年3月末で国内のたばこ生産を縮小し、浜松市や岡山市など3工場の閉鎖を決定し、その一環で郡山工場を閉鎖すると発表した(『福島民友』『福島民報』2013年10月13日)。郡山工場は、1905(明治38)年に設置され、郡山中央工業団地に立地して、従業員244人(2013年9月現在)を抱え、古くから郡山の中核企業としての役割を担ってきた。工場閉鎖にあたっては、地元首長や商工会議所などによる雇用維持などを求める陳情があったものの、JTの決定が覆ることはなかった。まさに「分工場経済」といわれる側面が顕在化した事態であった。