(4) 郡山市における工業の特徴

a 郡山市における工業の特徴

 表2は、従業者数ベースで福島県内における主要都市(会津若松市、福島市、郡山市、相馬市、いわき市)の工業構成(2021(令和3)年)を比較したものである。

 まず、福島県全体の工業構成をみると、「食料品製造業」(9.5%)、「電子部品・デバイス・電子回路製造業」(9.2%)、「業務用機械器具製造業」(7.4%)、「輸送用機械器具製造業」(7.3%)、「金属製品製造業」(7.1%)が上位5業種となっている。東北地方ではおおむね共通する構成であり、「食料品製造業」の比重が大きく、次いで機械系の業種が上位にきている。また、冒頭で触れたように、「輸送用機械器具製造業」が上位になっている点が注目される。自動車工業の場合、業種分類では「輸送用機械器具製造業」だけではなく、「金属製品製造業」、「ゴム製品製造業」、「繊維工業」、各種機械系業種などにも関連は及ぶので詳細を把握するには実態調査が必要とされるが、岩手県、宮城県からの波及効果も今後、期待される。

 つぎに、各主要都市の比較で、雇用規模(従業者数)を各主要都市間で比較すると、郡山市の従業者数は、1万8,704人で、いわき市の2万4,935人に次ぐ位置にある。

表2 工業構成(従業者数)の都市間比較(2021年)
産業分類 福島県 郡山市 福島市 会津若松市 いわき市 相馬市
構成比 構成比 構成比 構成比 構成比 構成比
製造菜計 155,061 100.0 18,704 100.0 16,535 100.0 8,804 100.0 24,935 100.0 3,801 100.0
食料品製造業 14,716 9.5 3,842 20.5 1,886 11.4 724 8.2 2,217 8.9 368 9.7
飲料・たばこ・飼料製造業  1,402 0.9  337  1.8  57  0.3  106  1.2  48  0.2   3  0.1
繊維工業  5,107 3.3  662  3.5  485  2.9  57  0.6  741  3.0  230  6.1
木材・木製品製造業(家具を除く)  2,319 1.5  181  1.0  28  0.2  64  0.7  881  3.5  3  0.1
家具・装備品製造業  2,621 1.7  82  0.4  68  0.4  507  5.8  868  3.5
パルプ・紙・紙加工品製造業  3,422 2.2  95  0.5  261  1.6  145  1.6 1,215  4.9  11  0.3
印刷・同関連業  2,881 1.9  372  2.0 1,242  7.5  177  2.0  195  0.8  26  0.7
化学工業  9,380 6.0 1,587  8.5  244  1.5  328  3.7 3,841 15.4  118  3.1
石油製品・石炭製品製造業  247 0.2  37  0.2   8  0.0  26  0.3  55  0.2
プラスチック製品製造業  8,992 5.8  489  2.6 1,006  6.1  195  2.2 1,046  4.2  88  2.3
ゴム製品製造葉  5,906 3.8  223  1.2  410  2.5  21  0.1
窯業・土石製品製造業  7,504 4.8 1,641  8.8  902  5.5  267  3.0 1,183  4.7  85  2.2
鉄鋼業  9,135 5.9  46  0.2  716  4.3  146  1.7  473  1.9  108  2.8
非鉄金属製造業  4,110 2.7  398  2.1  12  0.1  876 10.0  783  3.1  360  9.5
金属製品製造業 11,043 7.1 1,276  6.8 1,628  9.8  36  0.4 2,492 10.0  351  9.2
はん用機械器具製造業  5,723 3.7  761  4.1  442  2.7  107  1.2  495  2.0  15  0.4
生産用機械器具製造業  9,147 5.9  319  1.7  963  5.8  280  3.2 1,206  4.8  89  2.3
業務用機械器具製造業 11,455 7.4  649  3.5  372  2.2 2,671 30.3  381  1.5  9  0.2
電子部品・デバイス・電子回路製造業 14,257 9.2 1,143  6.1 1,384  8.4 1,556 17.7 1,371  5.5  105  2.8
電気機械器具製造業  8,996 5.8 1,663  8.9  905  5.5  60  0.7 1,248  5.0  198  5.2
情報通信機械器具製造業  8,883 5.7 1,772  9.5 3,200 19.4 2,555 10.2
輸送用機械器具製造業 11,312 7.3  752  4.0  102  0.6  199  2.3 1,275  5.1 1,514  39.8
その他の製造業  2,188 1.4  377  2.0  214  1.3  277  3.1  264  1.1  102  2.7
資料)経済産業省『経済構造実態調査』

 

 郡山市の工業構成をみると、「食料品製造業」が20.9%で突出している。次いで「情報通信機械器具」(9.5%)、「電気機械器具製造業」(8.9%)、「窯業・土石製品製造業」(8.8%)、「化学工業」(8.5%)となっており、相対的に高い構成比を占めている。今後の拡大が期待される「輸送用機械器具製造業」は4.0%となっており、福島県全体の構成比(7.3%)を下回っている。

 郡山市以外の都市をみると、それぞれに機械系で突出した業種が存在する。福島市では「情報通信機械器具製造業」(19.4%)、会津若松市では「業務用機械器具製造業」(30.3%)、いわき市では「情報通信機械器具製造業」(10.2%)、相馬市では「輸送用機械器具製造業」(39.8%)がそれである。この背景には、それぞれの地域における進出系大企業の立地が反映していると考えられる。それらと比較すると、郡山市における機械系業種の工業構成は相対的に平準化しているといえる。


b 郡山市の工業構成

 表3は、2012(平成24)年における郡山市の工業構成を事業所数、従業者数、製造品出荷額等、粗付加価値額それぞれで示したものである。

表3 郡山市における工業構成(2012( 平成24) 年)
産業分類 事業所数 従業者数 製造品出荷額等 粗付加価値額

(従業者30人以上)

構成比 (人) 構成比 (万円) 構成比 (万円) 構成比
製造業計 439 100.0 18,704 100.0 77,598,013 100.0 25,930,748 100.0
食料品製造業 75 17.1 3,842 20.5 5,587,804 7.2 2,665,534 10.3
飲料・たばこ・飼料製造業 8 1.8 337 1.8 20,415,509 26.3 5,254,091 20.3
繊維工業 36 8.2 662 3.5 475,978 0.6 175,227 0.7
木材・木製品製造業(家具を除く) 11 2.5 181 1.0 380,814 0.5 159,409 0.6
家具・装備品製造業 13 3.0 82 0.4 56,698 0.1 33,593 0.1
パルプ・紙・紙加工品製造業 7 1.6 95 0.5 285,824 0.4 69,334 0.3
印刷・同関連業 31 7.1 372 2.0 512,431 0.7 229,348 0.9
化学工業 15 3.4 1,587 8.5 13,618,760 17.6 4,393,839 16.9
石油製品・石炭製品製造業 4 0.9 37 0.2 396,322 0.5 113,520 0.4
プラスチック製品製造業 19 4.3 489 2.6 1,305,223 1.7 595,879 2.3
ゴム製品製造業 3 0.7 223 1.2 419,832 0.5 176,353 0.7
窯業・土石製品製造業 26 5.9 1,641 8.8 3,092,079 4.0 1,289,685 5.0
鉄鋼業 5 1.1 46 0.2 411,090 0.5 39,411 0.2
非鉄金属製造業 7 1.6 398 2.1 2,717,645 3.5 432,343 1.7
金属製品製造業 50 11.4 1,276 6.8 2,223,711 2.9 1,227,270 4.7
はん用機械器具製造業 10 2.3 761 4.1 2,512,655 3.2 465,400 1.8
生産用機械器具製造業 24 5.5 319 1.7 389,725 0.5 182,998 0.7
業務用機械器具製造業 9 2.1 649 3.5 3,948,903 5.1 2,811,876 10.8
電子部品・デバイス・電子回路製造業 18 4.1 1,143 6.1 4,942,252 6.4 1,862,168 7.2
電気機械器具製造業 20 4.6 1,663 8.9 6,839,518 8.8 909,084 3.5
情報通信機械器具製造業 16 3.6 1,772 9.5 4,841,709 6.2 2,168,060 8.4
輸送用機械器具製造業 7 1.6 752 4.0 1,619,208 2.1 411,232 1.6
その他の製造業 25 5.7 377 2.0 604,323 0.8 265,094 1.0
資料)経済産業省『工業統計調査』

 

 事業所数は、総数439事業所で、中小企業比率の高い「食料品製造業」、「金属製品製造業」が多く、それぞれ75事業所(17.1%)、50事業所(11.4%)となっている。機械系業種は、104事業所で全体の23.7%と、全体のほぼ4分の1を占めている。

 従業者数では、「食料品製造業」(20.5%)、「化学工業」(8.5%)、「窯業・土石製品製造業」(8.8%)、「電気機械器具製造業」(8.9%)、「情報通信機械器具製造業」(9.5%)が上位を占める。従業者数でも「食料品製造業」が突出しており、他に構成比10%を超える業種はない。

 製造品出荷額等、粗付加価値額は、郡山市に立地する特定の大企業の数値が反映される傾向にある。

表4 郡山市における工業構成(2022( 令和4 ) 年)
産業分類 事業所数 従業者数 製造品出荷額等 粗付加価値額

(従業者30人以上)

構成比 (人) 構成比 (万円) 構成比 (万円) 構成比
製造業計 451 100 18,425 100 70,106,069 100 23,881,561 100
食料品製造業 60 13.3 3,809 20.7 6,321,007 9 2,525,007 10.6
飲料・たばこ・飼料製造業 11 2.4 120 0.7 247,103 0.4 74,167 0.3
繊維工業 30 6.7 541 2.9 735,980 1 416,438 1.7
木材・木製品製造業(家具を除く) 13 2.9 234 1.3 507,618 0.7 127,376 0.5
家具・装備品製造業 14 3.1 58 0.3 50,781 0.1 27,610 0.1
パルプ・紙・紙加工品製造業 10 2.2 159 0.9 403,382 0.6 127,216 0.5
印刷・同関連業 37 8.2 476 2.6 614,375 0.9 284,588 1.2
化学工業 14 3.1 1,805 9.8 25,408,759 36.2 8,331,150 34.9
石油製品・石炭製品製造業 6 1.3 51 0.3 278,825 0.4 63,969 0.3
プラスチック製品製造業 25 5.5 747 4.1 2,097,243 3 1,082,510 4.5
ゴム製品製造業 4 0.9 403 2.2 1,514,626 2.2 1,049,176 4.4
窯業・土石製品製造業 30 6.7 931 5.1 3,461,351 4.9 1,272,360 5.3
鉄鋼業 7 1.6 84 0.5 612,984 0.9 163,586 0.7
非鉄金属製造業 7 1.6 501 2.7 1,677,199 2.4 500,948 2.1
金属製品製造業 60 13.3 1,456 7.9 3,501,471 5 1,788,466 7.5
はん用機械器具製造業 6 1.3 543 2.9 4,062,667 5.8 708,863 3
生産用機械器具製造業 30 6.7 653 3.5 1,185,382 1.7 149,927 0.6
業務用機械器具製造業 10 2.2 964 5.2 1,929,249 2.8 486,552 2
電子部品・デバイス・電子回路製造業 18 4 1,294 7 6,477,082 9.2 2,261,465 9.5
電気機械器具製造業 17 3.8 2,095 11.4 5,024,930 7.2 1,377,046 5.8
情報通信機械器具製造業 9 2 810 4.4 2,596,129 3.7 532,100 2.2
輸送用機械器具製造業 6 1.3 334 1.8 808,505 1.2 293,007 1.2
その他の製造業 27 6 357 1.9 589,421 0.8 238,034 1
資料)経済産業省『経済構造実態調査』

 

 製造品出荷額等では「飲料・たばこ・飼料製造業」(26.3%)、「化学工業」(17.6%)、粗付加価値額でも同様に「飲料・たばこ・飼料製造業」(20.3%)、「化学工業」(16.9%)が上位2業種となっている。

 表4は、2022(令和4)年における郡山市の工業構成を事業所数、従業者数、製造品出荷額等、粗付加価値額それぞれで示したものである(製造品出荷額及び粗付加価値額の数値は2021(令和3)年1月~12月の数値)。前述したように、中核企業の撤退によって、工業構成はこの10年間で大きく変化した。

 事業所数は、総数451事業所で、この10年間で12事業所増加した。構成比は「食料品製造業」、「金属製品製造業」が依然として多いが、「食料品製造業」の比率は低下した。それぞれ60事業所(13.3%)、60事業所(13.3%)の同数となっている。

 従業者数は、この10年間で279人減少して1万8,425人になった。構成比は「食料品製造業」(20.7%)、「化学工業」(9.8%)、「金属製品製造業」(7.9%)、「電子部品・デバイス・電子回路製造業」(7.0%)、「電気機械器具製造業」(11.4%)が上位を占めるようになった。とくに、機械系業種での変動が大きかった。それぞれみてみると、「はん用機械器具製造業」761人→543人、「生産用機械器具製造業」319人→653人、「業務用機械器具製造業」649人→964人、「電子部品・デバイス・電子回路製造業」1,143人→1,294人、「電気機械器具製造業」1,663人→2,095人、「情報通信機械器具製造業」1,772人→810人、「輸送用機械器具製造業」752人→334人となっており、「はん用機械器具製造業」、「情報通信機械器具製造業」、「輸送用機械器具製造業」の3業種で従業者数の減少を記録した。自動車関連産業の郡山市への波及は限定的なものにとどまっているようである。

 製造品出荷額等、粗付加価値額については、JTの撤退が大きく響いている。製造品出荷額等は、2012(平成24)年の7,759億8,013万円から2022(令和4)年には7,010億6,069万円に減少した。粗付加価値額も同期間に、2,593億748万円から2,388億1,561万円に減少している。特に、JTが含まれる「飲料・たばこ・飼料製造業」をみると、製造品出荷額等、粗付加価値額それぞれ2,041億5,509万円→24億7,103億、525億4,091万円→7億4,167万円と大きく減少し、構成比もそれぞれ26.3%→0.4%、20.3%→0.3%に低下した。JT郡山工場の撤退によるインパクトの大きさがうかがえる。

 その結果、2022(令和4)年における製造品出荷額等、粗付加価値額の構成比は大きく変化することになった。製造品出荷額等では、「化学工業」の構成比が大きく上昇して36.2%となった。次いで「電子部品・デバイス・電子回路製造業」の構成比が9.2%、「食料品製造業」9.0%に上昇した。粗付加価値額でも同様に、「化学工業」の構成比が34.9%、「食料品製造業」の構成比が10.6%、「電子部品・デバイス・電子回路製造業」の構成比が9.5%となっている。

 JT郡山工場の撤退による工業指標の減少を補うには至っていないが、古くから郡山市に立地する「化学工業」や進出系の「電子部品・デバイス・電子回路製造業」は順調に成長しており、今後の郡山工業発展にとって重要な位置にある。残念ながら、東北地方で期待されている自動車産業の波及効果は、郡山市においてはいまだしといわざるをえない。


c 撤退企業の跡地利用

 この10年間で郡山市から撤退する企業もいくつかみられるようになった。こうした工場跡地の利用も、雇用を通じた市民税、固定資産税などの税収に関わるだけに、郡山市経済にとっては見逃せない課題となっている。

 森永乳業は、2010(平成22)年に乳児用粉ミルクの原料などの粉乳を生産している郡山工場を2011(平成23)年9月末に閉鎖することを発表した。少子化の進展により牛乳や乳製品の需要が減少しており、生産拠点を統廃合してコストを削減することがその背景にある。11月中に労働組合に工場閉鎖の方針を伝ており、郡山工場で働く従業員42人は他の工場に配置転換する方向で労働組合と協議を進めることになった。粉乳などの生産は、福島工場(福島市)や松本工場(長野県松本市)などに移管する予定となっている。郡山工場は、1964(昭和39)年に操業を開始し、瓶や紙パックに入った牛乳、粉乳を生産していたが、2006(平成18)年にはすでに牛乳の生産は中止していた。森永乳業は、牛乳や乳飲料を生産する徳島工場(徳島県石井町)も11年9月末に閉鎖する方針である(『福島民報』2017年1月21日)。

 森永乳業郡山工場跡地には、ヨークベニマル(福島県郡山市)が2017(平成29)年11月にショッピングセンターを開業することを決定した。東日本大震災の半年後に工場が閉鎖されて以降、約2万8,000平方メートルの空き地再利用が懸案となっていたが、6年ぶりに商業施設として再生することになった。ダイユーエイト(福島市)や東邦銀行も店舗を構え、大型ショッピングセンターが少ない郡山市東部の新たな集客拠点となることが期待されている(『日本経済新聞』2017年9月21日)。

 前述したように、JTは、2015(平成27)年3月末で国内のたばこ生産を縮小して浜松市や岡山市など3工場の閉鎖を決定し、その一環で郡山工場(郡山中央工業団地)が閉鎖された。その跡地は、大和ハウス工業が取得し、大規模物流拠点を建設した。2019(令和元)年9月に「DPL(ダイワハウス・プロジェクト・ロジスティクス)郡山I」が完成している(『福島民報』2017年10月26日)。

 以上のように、郡山市から撤退した工場跡地は、主として流通部門など第三次産業的な土地利用に転換している。


d 郡山工業の機能強化

 冒頭で地方工業の特徴として、「頭脳部分を欠いた工業化」、「分工場経済」という点を指摘した。郡山市の工業も同様の特徴を有している。2015(平成27)年のJT郡山工場の撤退はその象徴的な出来事であった。しかしながら、この10年間で郡山市に配置された事業所にあっても、研究開発機能を強化したり、公的にも研究開発機能をもつ施設が設置されたりするなど、郡山工業の機能を強化する動きが生じ始めている。

【公的機関の機能強化】

 郡山市のみならず福島県全体にとって最も期待されている機関は、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)福島再生可能エネルギー研究所(FREA)の設置である。

 産業技術総合研究所(つくば市)は、101億円を投資して、郡山西部第二工業団地に研究施設を2013(平成25)年度中に整備した。そこには次世代太陽光発電パネルの製造ラインが設置され、2016(平成28)年度をめどに新型パネルを開発する予定であることが発表された。開発にあたっては、福島県、地元大学、民間企業などと共同し、製造技術のノウハウを共有することになっている。同所に配置される研究職員は100人程度で、地元からも事務職員を雇用する(『福島民友』2012年5月4日、10月31日)。

 同研究所の重点研究分野は、「再生可能エネルギーネットワーク開発・実証」、「水素キャリア製造・利用技術」、「高効率風車技術・アセスメント技術」、「次世代太陽光発電技術」、「地熱の適正利用技術」、「地中熱ポテンシャル評価とシステム最適化技術」の6分野で、予定通り、2014(平成26)年4月1日に開所された。

 公的な研究開発系の機関は、その他にも、経済産業省による「パワーコンディショナー(電力変換装置)」の研究拠点施設を郡山市に設置する方針が発表され、大型パワコンの性能・安全性の試験評価を行うことになっている(『福島民報』2013年12月6日)。また、「ふくしま医療機器産業推進機構」を運営母体とする「福島県医療機器開発・安全性評価センター」が2015(平成27)年度に県農業試験場跡地に開設された(『福島民報』2014年4月2日)。

 これまで福島県内の製造業支援を行ってきた公設試の中核であったハイテクプラザ(郡山西部第二工業団地に立地)は、福島市、いわき市の技術支援センターの施設老朽化や利用の低迷を背景に、両センターを集約する。これまで、いわき技術支援センターは機械を、福島技術支援センターは繊維を担当してきた。両センターの研究員等もハイテクプラザに異動する予定である。企業から受ける相談件数は本部(ハイテクプラザ)が全体の76.9%を占め、福島、いわきの両センターは13.0%と低迷していた(『福島民友』、『福島民報』2021年12月1日)。

 以上のように、公的な研究機関の郡山市への集積が徐々にではあるが進展してきている。こうした動きにあわせて、郡山市も2002(平成14)年度に策定した『郡山市工業振興計画』を改訂して、2017(平成29)年度までの指針を示した。そこでは「復興特区などを活用した企業誘致や産業集積」、「再生可能エネルギーの研究拠点施設を生かした新事業の創出」、「市内他産業との連携」などが目標として示された(『福島民友』2012年9月5日)。数値目標も導入されることになっている。

【民間企業の機能強化】

 公的機関だけではなく、民間企業においても研究開発部門の拡充や「マザー工場」化が進展している。

 1990(平成2)年に郡山西部第二工業団地に進出した京セラケミカルは、2012(平成24)年9月をめどに、川口工場(埼玉県)に設置している研究開発部門を郡山工場に集約することになった。これによって、川口工場から50~60人の従業員が郡山工場に異動することが見込まれている。郡山工場は、研究開発機能を強化することで半導体封止材料部門の拠点工場(「マザー工場」)となった(『福島民友』2012年4月11日)。

 日立製作所は、情報通信システム部門の再編により、日立製作所郡山工場(日立情報通信マニュファクチャリング)をITインフラ向け製品(ストレージ、サーバー)の「マザー工場」に位置付けることになった(『福島民報』2014年11月26日)。その後、同工場は雇用(660人)を維持したまま車載用電子機器の受託製造会社に売却された(『福島民報』2018年4月4日)。

 日東紡は、1898(明治31)年に設立された郡山絹糸紡績(その後、片倉製糸岩代紡績所)を前身の一つとし、現在、郡山市には日東紡富久山事業センターが配置されている。日東紡は、研究開発体制を強化するにあたって、事業部門ごとの研究開発部門を、富久山事業センター内に置く「総合研究所」本部のもとに統括する計画である。それぞれの研究開発部門は、研究企画管理部、コーポレート研究センター、メディカル研究開発センター、スペシャリティケミカルス研究開発センターである。カリフォルニア州サンディエゴ近郊に開設した海外研究開発拠点は、メディカル研究開発センター(富久山事業センター)の傘下となる(『福島民友』2017年1月5日)。

 このように、民間企業においても「頭脳を欠いた」状況から、研究開発機能を備えた「マザー工場」への変化が進展している。

(末吉 健治)