(1) 金融情勢の変化と地域金融

 2012(平成24)年から10年間の金融情勢としては、2012(平成24)年1月に8,000円台でスタートした日経平均株価が2021(令和3)年末に2万9,000円台近くまで上昇した。日本経済は、2008(平成20)年のリーマン・ショックの影響から景気低迷し、2011(平成23)年3月の東日本大震災により大きな打撃を受けたところから、2013(平成25)年以降のアベノミクスによる大胆な金融政策など「3本の矢」を柱とする経済政策によって、回復の道を辿った。福島県経済はそれに加えて、復興特需により景気回復につながっていった。


a 震災の影響・金融機関の対応

 2011(平成23)年3月の東日本大震災および原発事故の影響により福島県は甚大な社会的、経済的被害を受け、金融業(金融機関)にとっても多大な影響を受けることとなった。被災により長期休業した郡山市内の金融機関店舗は、東邦銀行郡山市役所支店(同年5月に仮店舗で再開)、大東銀行うねめ支店(同5月再開)と少なかった。しかし、郡山市内店舗においても、被災したことで通帳や印鑑がない個人に対する便宜的な支払いや、住宅ローンや事業性融資先に対する自動引落停止、返済条件変更の弾力的な対応を行い、被害にあった個人、企業の状況に応じた対応を継続するなど、震災に関連する業務に対応することとなった。

 また、震災・原発事故に係る東京電力からの賠償金を受け取ることにより、個人預金が増加することとなった。貯蓄志向の高まりなど他の要因もあるとはいえ、福島県内民間金融機関の実質預金残高は、2012(平成24)年1月末の約6兆9,000億円から2021(令和3)年12月末には10兆3,000億円へと大きく増加した。

b 大規模金融緩和

 日本は、1990年代のバブル崩壊以降、1999(平成11)年にゼロ金利政策による金融緩和を開始し、以降景気状況に応じてゼロ金利の解除と復活を繰り返してきた。

 デフレ経済からの脱却を目指し、2013(平成25)年4月から日本銀行が「量的・質的金融緩和」政策を実行に移した。2016(平成28)年1月には「マイナス金利付き量的・質的金融緩和政策」を実行、同年2月に日銀当座預金の一部に-0.1%のマイナス金利を適用した。同年9月「長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策」を導入、イールドカーブ・コントロール(市場調整により長短金利を操作)を行うようになった。

 金融緩和政策により、住宅ローンなどの貸出金利は下がる一方、預金利息はほぼゼロの状態が続いている。民間金融機関では、利ざや収入が減り、低金利環境が続くことで、金融機関経営に影響を受けている。

c 新型コロナウイルス感染拡大に伴う対応

 2020(令和2)年頃からの新型コロナ感染拡大に伴い影響を受けた事業者に対して、全国銀行協会は、「銀行はお客さま・職員の健康・人命保護を最優先することを大前提とし、銀行が提供する業務が社会機能の維持に不可欠な金融インフラであること」を自覚し、必要なサービスを可能な限り継続して提供することを申し合わせた。そこで、各銀行は、社会機能の維持に必要となる現金供給(預金等の払い戻し)などの重要業務はもとより、既往債務の返済猶予等による条件変更、新規融資については、政策金融機関や信用保証協会によるセーフティネット保証等の活用等に対して迅速に対応した。

 感染防止の観点から接触機会の軽減の意図もあり、新規口座作成やローン申込・契約手続きなどWEB取引の拡大が図られることとなった。また、全国的な感染拡大状況を踏まえて、昼時間休業をする金融機関が増え、現在も業務効率化などの観点から一部店舗では昼時間休業を継続している。