(2) 郡山市における金融機関

 郡山市内における商業銀行は、都市銀行がみずほ銀行の1行、地方銀行の東邦銀行、秋田銀行、常陽銀行、足利銀行、山形銀行、七十七銀行、荘内銀行の7行、第二地方銀行の大東銀行、福島銀行、北日本銀行の3行の計11行が本支店を置いている。専門金融機関としては、信用金庫が郡山信用金庫、須賀川信用金庫の2金庫、信用組合が福島県商工信用組合、ウリ信用組合、あすか信用組合の3組合、労働金庫が東北労働金庫の1金庫、農林漁業金融機関が福島さくら農業協同組合の1組合の7金融機関が本支店を置いている(図1)。


図1 郡山市における金融機関の体系図

 この間の合併は、2016(平成28)年に郡山市農業協同組合を含む5組合が合併し福島さくら農業協同組合となった。

 郡山市内における2012(平成24)年度から2021(令和3)年度までの金融機関の店舗数の推移については、WEB取引拡大や銀行の店舗網の再構築に伴う支店併設等により6店舗減少した。(『資料編』(第4編・10-1-2、第4編・10-1-3))


a 金融機関の概要

 2022(令和4)年3月末現在、郡山市内に本支店を置く金融機関は、都市銀行がみずほ銀行(預金133兆6千億円、貸出金82兆9千億円、店舗数511)の1行である。

 地方銀行のなかで県内に本店を置く銀行は福島市の東邦銀行(預金5兆7千億円、貸出金3兆6千億円、店舗数122)の1行。他県に本店を置く地方銀行が、秋田県の秋田銀行(預金3兆1千億円、貸出金1兆8千億円、店舗数98)、茨城県の常陽銀行(預金10兆円、貸出金6兆7千億円、店舗数185)、栃木県の足利銀行(預金6兆8千億円、貸出金5兆1千億円、店舗数134)、宮城県の七十七銀行(預金8兆6千億円、貸出金5兆3千億円、店舗数143)、山形県の山形銀行(2兆8千億円、貸出金1兆7千億円、店舗数84)、荘内銀行(預金1兆2千億円、貸出金8千億円、店舗数88)の6行がある。

 第二地方銀行の中で県内に本店を置く銀行は、郡山市の大東銀行(預金7千4百億円、貸出金6千3百億円、店舗数56)、福島市の福島銀行(預金7千7百億円、貸出金5千7百億円、店舗数57)の2行。他県に本店を置く銀行は、岩手県の北日本銀行(預金1兆3千億円、貸出金1兆円、店舗数77)の1行。

 信用金庫は、郡山市に本店を置く郡山信用金庫(預金2千2百億円、貸出金1千億円、店舗数19)、須賀川市が本店の須賀川信用金庫(預金2千3百億円、貸出金1千億円、14店舗)の2金庫。

 信用組合は、郡山市に本店を置く福島県商工信用組合(預金1千9百億円、貸出金1千2百億円、店舗数16)、北海道が本店のウリ信用組合(預金9百億円、貸出金6百億円、店舗数6)、東京都が本店のあすか信用組合(預金3千7百億円、貸出金3千百億円、店舗数16)の3組合。

 労働金庫は宮城県に本店がある東北労働金庫(預金2兆2千億円、貸出金1兆3千億円、店舗数70)、農業協同組合は、2016(平成28)年に県内5地区の農業協同組合が合併した福島さくら農業協同組合(預金6千6百億円、貸出金1千5百億円、店舗数51)の1組合(表1)。

表1 郡山市に本支店のある金融機関の概要  2022(R4)年3月31日現在
名称 本店所在地 預貯金 貸出金 預貸率 店舗数 うち郡山市 行職員数
都市銀行
みずほ銀行 千代田区 1,336,339 829,625 62.1 511 1 25,897
地方銀行
○東邦銀行 福島市 57,489 36,762 63.9 122 21 1,925
秋田銀行 秋田市 31,160 18,337 58.8 98 5 1,293
常陽銀行 水戸市 100,540 67,674 67.3 185 1 3,213
足利銀行 宇都宮市 68,034 51,281 75.4 134 1 2,619
七十七銀行 仙台市 86,205 53,402 61.9 143 1 2,673
山形銀行 山形市 28,099 17,168 61.1 84 1 1,193
荘内銀行※ 鶴岡市 12,979 8,546 65.8 88 1 643
第二地方銀行
◎大東銀行 郡山市 7,419 6,372 85.9 56 17 465
〇福島銀行 福島市 7,755 5,727 73.8 57 9 471
北日本銀行 盛岡市 13,985 10,069 72.0 77 1 835
信用金庫
◎郡山信用金庫 郡山市 2,212 1,029 46.5 19 15 174
〇須賀川信用金庫 須賀川市 2,349 1,091 46.4 14 4 178
信用組合
◎福島県商工信用組合 郡山市 1,922 1,265 65.8 16 7 202
ウリ信用組合 札幌市 942 623 66.1 6 1 65
あすか信用組合 新宿区 3,744 3,133 83.7 16 1 209
労働金庫
東北労働金庫 仙台市 22,292 13,010 58.4 70 2 1097
農業協同組合
◎福島さくら農業協同組合 郡山市 6,618 1,506 22.8 51 16 1274
その他銀行
セブン銀行 千代田区 7,928 282 3.6 911
ゆうちょ銀行 千代田区 1,825,271 23,734
うち福島県の計数 27,426 525 53
(単位: 預貯金および貸出金 億円、行員数 人)
(預貯金と貸出金は億円、預貸率は%、店舗数は店、行職員数は人)
 
店舗数は国内のみ
東邦 多店舗内で営業する店舗29店 うち郡山店6店
秋田 多店舗内で営業する店舗12店
常陽 多店舗内で営業する店舗41店
足利 多店舗内で営業する店舗16店
七十七 多店舗内で営業する店舗21店
山形 多店舗内で営業する店舗32店
荘内 多店舗内で営業する店舗49店 うち郡山店1店
大東 多店舗内で営業する店舗2店 うち郡山店1店
福島 多店舗内で営業する店舗13店 うち郡山店1店
北日本 多店舗内で営業する店舗12店
県商工信組 多店舗内で営業する店舗3店 うち郡山店2店
福島さくら農協 3店舗が避難中
 
荘内銀行は店舗内支店として福島支店内で営業(2020年2月)

b 証券会社

 リーマン・ショック以後、外国証券会社の経営合理化の一環として日本にある拠点の見直しが進められ、統合・買収等により大手証券会社5社(野村、大和、SMBC日興、みずほ、三菱UFJモルガン・スタンレー)体制となった。また、1998(平成10)年に新規参入が始まったネット証券は、手数料の安さと来店せずにインターネット上で口座開設や株式の売買ができる利便性が支持されて、個人投資家を中心に利用が拡大している。2019(令和元)年に米国で始まった手数料無料化の動きは、日本においてはSBI証券が2019(令和元)年12月に投資信託の販売手数料無料化などから始まり、現在は同社などが日本株売買手数料の無料化まで進んでおり、株式の売買手数料から収益を得るという証券会社のビジネスモデルが変革してきている。

 日本証券業協会所属の会員数からみると、2008(平成20)年12月時点で全国に322社あったものが、統廃合から2015(平成27)年12月に252社まで減少したが、銀行が子会社の証券会社を設立する動きから、2021(令和3)年12月には274社まで戻っている。

 郡山市内の証券会社は、業界大手の野村証券、大和証券、みずほファイナンシャルグループのみずほ証券、めぶきファイナンシャルグループのめぶき証券、東邦銀行グループのとうほう証券の5社がある。郡山市内の証券会社は、これまでの3社体制に銀行子会社の2社が加わる形となった。

 そのうちの一つ、とうほう証券は2016(平成28)年4月に北海道・東北の地銀で初の全額出資の証券子会社として開業、郡山支店が同年月に東邦銀行郡山営業部内に開設された。


c 保険業

 保険業は従来型の「第一分野」(生命保険)、「第二分野」(損害保険)に加え、1980年代にがん保険などのどちらにも属さない「第三分野」が登場し、その後、1996(平成8)年の保険業法改正により、生命保険会社が損害保険子会社を、損害保険会社が生命保険子会社を設立することが解禁された。また、保険商品の銀行窓口での販売は、2001(平成13)年の住宅関連火災保険などから段階的に始まり、全面解禁となった2007(平成19)年には生命保険の定期保険や自動車保険などすべての保険商品を扱えるようになった。

 郡山市内に進出している保険会社は、生命保険会社が18社、損害保険会社が9社ある。生命保険会社のうち、外資系の保険会社は5社、損保子会社は3社である。損害保険会社では外資系1社で、生保子会社はゼロである。

 ここ10年の動向をみると、生命保険会社では、NKSJひまわり生命保険が2014(平成26)年に損害保険ジャパン日本興亜の発足に伴い損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険に商号変更、更に2019(令和元)年にSOMPOひまわり生命保険に商号変更した。メットライフアリコ生命保険は2014(平成26)年にメットライフ生命保険に商号変更した。アメリカンファミリー生命保険は2018(平成30)年、日本法人化し、アフラック生命保険として営業開始した。従来型の保険会社に合併の動きは無かったが、損保子会社や外資生保で合併が行われた。

 損害保険会社では、外資系のAIU損害保険は富士火災海上保険と合併し、AIG損害保険となった。2014(平成26)年に日本興亜損害保険と損害保険ジャパンが合併し、損害保険ジャパン日本興亜となり、2020(令和2)年には現在の損害保険ジャパンに商号変更した。朝日火災海上保険は2018(平成30)年に楽天インシュアランスホールディングスの子会社となり、楽天損害保険に社名変更となった。損害保険会社についても生命保険会社と同様にネット会社や外資の参入を受けて競争が激化しており、再編の動きがみられた。


d 郵便貯金

 2022(令和4)年3月末現在のゆうちょ銀行は、(表1 郡山市に本支店のある金融機関の概要)のとおり、貯金残高が182兆円と大手都市銀行のみずほ銀行より49兆円上回る巨大な金融機関である。そのうち福島県内の貯金残高は2兆7,000億円と、地方銀行の東邦銀行(同行全体の預金残高5兆7,000億円)に次ぐ規模である。営業所数はゆうちょ銀行の福島・郡山・いわきの3出張所に加え、県内各地の郵便局・簡易郵便局が銀行代理業を営んでおり、合計525店舗(うち郡山市内53店舗)と、福島県内にくまなく店舗を有している。この間、ゆうちょ銀行は、2015(平成27)年に東京証券取引所第一部に上場した。2019(令和元)年にソニー銀行、2020(令和2)年には新生銀行を所属銀行とする住宅ローン媒介業務を開始した。2021(令和3)年には、口座貸越による貸付業務、個人向け住宅融資業務(フラット35)、損害保険募集業務を開始するなど、多方面に業務を拡大している。

(一般財団法人とうほう地域総合研究所)