(1) 全国都市交通特性調査

 国土交通省が実施する全国都市交通特性調査(旧:全国都市パーソントリップ調査)は、個人による一日の移動を目的や利用交通手段とともに把握する内容である。郡山市は、1987(昭和62)年の第一回調査から対象都市となり、概ね5年ごとにこれまで7回の調査が実施された。直近の調査は2021(令和3)年10月から11月に行われ、市内では500世帯が対象となった。

 表1は、郡山市における代表交通手段分担率の構成比を示したものである。代表交通手段は、一つの移動がいくつかの交通手段で成り立っているときに、そのなかでの代表的なものを指しており、鉄道、バス、自動車(「自動車(運転)、「自動車(同乗)」)、自動二輪車、自転車、「徒歩その他」の順で集計される。通勤交通を多く含む平日の調査では、1987(昭和62)年に43.5%であった自動車の分担率が2021(令和3)年には71.3%に上昇し、2015(平成27)年を除き、一貫して増加基調にある。同じく平日の公共交通(鉄道、バス)分担率は、1992(平成4)年の6.4%から2021(令和3)年は3.5%となったものの、調査年次による変動が大きく、傾向を読み取ることは難しいが、分担率が低い状況のままであると言える。一方、自転車の分担率は、平日、休日とも低下基調にあり、2021(令和3)年度は、いずれも10%を下回った。休日の自動車分担率は、2021(令和3)年調査で85.1%と平日と同様に過去最高となり、後述する郡山市総合交通計画マスタープランの方針とは相反し、自家用車交通への依存に歯止めがかかっていない現状にある。

表1 代表交通手段別構成比の推移
年次 平日 休日
鉄道 バス 自動車 自動

二輪車

自転車 徒歩・

その他

鉄道 バス 自動車 自動

二輪車

自転車 徒歩・

その他

1987年 0.8 3.9 43.5 3.4 18.0 30.4 0.4 6.2 55.8 2.7 17.0 17.9
1992年 2.0 4.4 57.8 1.5 12.0 22.4 1.1 2.8 69.1 1.0 9.8 16.3
1999年 2.5 1.9 60.7 0.9 13.8 20.2 1.3 1.4 74.7 0.9 10.8 11.0
2005年 1.1 1.6 65.4 0.6 13.7 17.7 0.9 1.2 77.0 1.1 10.7 9.0
2010年 2.4 1.6 68.1 1.2 10.0 16.6 1.0 1.3 78.3 0.6 7.7 11.1
2015年 2.4 2.3 66.7 0.5 10.7 17.4 1.7 0.7 82.8 0.7 5.2 8.9
2021年 1.9 1.6 71.3 0.2 7.6 17.3 2.2 0.9 85.1 0.1 3.8 7.9
各年次の都市交通特性調査結果より作成。1992年以降の「自動車」は「自動車(運転)」と「自動車(同乗)」の合計。

 ところで、2020(令和2)年春から日本国内でも拡大した新型コロナウイルス感染症は、不要不急の外出自粛がアナウンスされたことを背景に、外出機会自体の減少をもたらした。表2は、各調査年次における郡山市の外出率の推移を示したものである。2015(平成27)年までは平日、休日とも顕著な増減は見られなかったが、2021(令和3)年調査では、平日の外出率が77.2%、休日が50.9%と最も少なくなり、とくに休日の外出機会が少なくなったことが分かる。このことは、後述する地域公共交通(鉄道、バス、タクシー)の持続的なサービス提供をより困難にしたほか、休日交通の中心である「愉しみのための外出」が忌避されたことで、商業や飲食業、観光業などの活性化を阻害する要因にもなった。新型コロナウイルス感染症は、2023(令和5)年5月8日以降、感染症法に基づく分類の5類に引き下げられ、外出自粛のアナウンスが発せられないことになったが、休日の外出機会をどう創出するかが地域公共交通のみならず、地域産業の活性化を図るうえで、郡山市の課題となっている。

表2 外出率の推移
年次 平日 休日
1987年 87.3 66.5
1992年 82.0 65.9
1999年 79.4 57.3
2005年 82.6 64.0
2010年 82.8 68.0
2015年 81.1 63.4
2021年 77.2 50.9
各年次の都市交通特性調査結果より作成。