郡山市では、「郡山都市圏総合都市交通計画」(2010(平成22)年策定)を交通分野の上位計画に位置づけ、それに基づき「郡山市総合交通戦略」(2011(平成23)年策定)、「郡山市地域公共交通網形成計画」と「郡山市バリアフリー基本構想」(2016(平成28)年策定)を定め、関連する分野ごとに計画及び事業の推進を進めてきた。
2020(令和2)年に改正された「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づく「地域公共交通計画」及び、2018(平成30)年に改正された「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」に基づく「移動等円滑化促進方針」と「移動等円滑化基本構想」を兼ね、さらに都市・地域総合交通戦略要綱(国土交通省都市局)に基づく「都市・地域総合交通戦略」に関する事項を整理・統合し、取りまとめた新たな計画の検討が進められた。
2021(令和3)年度から新計画策定のための作業が開始され、翌年度の2023(令和5)年3月に「郡山市総合交通計画マスタープラン」(以下、マスタープラン)が従来の「郡山市総合交通戦略」、「郡山市地域公共交通網形成計画」と「郡山市バリアフリー基本構想」を統合する形で策定された。
マスタープランの策定及び計画期間は2021(令和3)年度以降の事象ではあるが、先に述べたとおり、この10年間の法改正や策定作業を踏まえたものであるため、その内容について本項で触れることとする。
マスタープランは、2023(令和5)年度から2030(令和12)年度を計画期間として、「交通手段が充実し、全てのひとが安心して円滑に移動できるまち」を基本的方針に掲げた。プランの84ページには「人口減少や高齢化の進行等を前提に、本市において市民が安心で快適に暮らし続けていく上では、過度な自動車利用に依存することなく、徒歩や自転車、公共交通等の移動により外出しやすく健康的に様々な都市サービスを享受できるまちづくりの形成が重要」としたうえで、「本市のまちづくりの考え方と連携し、公共交通、道路、自転車・歩行者等のすべての交通手段において、持続的で円滑に移動できる交通ネットワークの実現を図ります」と述べ、以下に述べる五つの目標に加え、九つの施策と30のプロジェクトを掲げている。
・目標1 持続的で誰もが利用しやすい公共交通体系づくり(誰もが居住地から様々な生活サービス施設にアクセスできるなど、円滑に移動可能な公共交通ネットワークづくりを進める)
・目標2 円滑な交通とストック効果につながる道路づくり(道路混雑が軽減され円滑な交通確保、計画的な道路整備に伴う沿線の土地利用促進など、効率的・効果的なまちづくり及び道路づくりを進める)
・目標3 環境にやさしく身近で健康的に利用できる自転車・歩行空間づくり(バリアフリーで回遊しやすい都市環境を確保するなど、外出しやすく健康増進にもつながる自転車・歩行空間づくりを進める)
・目標4 新たな交通サービスのチャレンジと仕組みづくり(MaaSやAI、IoTなどの新たな技術の活用など、地域に合った交通サービスの提供ができるよう、先進事例等を参考に取組の導入検討を進める)
・目標5 多様な主体の連携によるまちづくり(スクールバスや病院等の送迎サービスなどの移動手段の活用など、交通事業者をはじめ、様々な関係者との協議・調整を行いながら、より良い交通施策の取組検討を進める)
なお、マスタープランでは、バリアフリー化の推進に関する基本的な方針と目標を別に定めている。「すべての人が安心して円滑に移動でき、快適に暮らせるまち」を基本的な方針として、プランの158ページには「共生社会の実現に向け、幅広い関係者が連携しながら、ハード・ソフト両面でのさらなるバリアフリー化を推進し、障がいの有無や年齢、性別等にかかわらず、すべての人が『住んでいてよかったなと思えるまち』、『安心して暮らせるまち』、『思いやりがあり、誰にでも優しいまち』、『どこにでも自由に行けるまち』を目指します」と述べられている。また、目標としては「安全・安心に継続的かつ計画的な施設整備」、「みんなで支え合う心のバリアフリーの推進」、「事業者・行政が連携した取組の推進」の3点を挙げ、バリアフリー化の促進が特に必要であると認められる「移動等円滑化促進地区」には、郡山駅周辺、郡山市役所周辺、郡山富田駅周辺、安積永盛駅周辺を定めた。