(3) 郡山富田駅と郡山中央スマートインターチェンジの開業

a 郡山富田駅の開業

 郡山富田駅は、郡山市富田町満水田地内に整備された磐越西線の請願駅であり、2017(平成29)年4月1日に開業した。郡山駅から営業キロ3.4km、喜久田駅から同4.5kmの位置にあり、6両編成に対応した一面一線のホームのほか、待合室と倉庫を備えた駅舎が建設された。また、都市施設として、交通広場と駐輪場、公衆トイレ、跨線人道橋も設けられた。これらの整備に対する2013(平成25)年度から2017(平成29)年度までの事業費は、約18億8,000万円であった。その財源としては、社会資本整備総合交付金が約7億2,600万円、震災復興基金として創設した基金からの繰入金が約6億7,600万円、起債約4億7,800万円が充てられた。快速を含む全ての定期列車(開業日時点では上下あわせて37本)が停車し、1日1,000人の利用者が見込まれている。

 郡山市内の新駅設置は、市議会でたびたび取り上げられ、郡山都市圏総合都市交通計画でも当初より位置づけられてきた。郡山市議会では、1985(昭和60)年以降の会議録検索が可能なシステムを公開しているが、「新駅」をキーワードとした発言は、1986(昭和61)年の12月定例会における柳内留吉議員(当時)の質問が最初に記録され、それに対する高橋晃商工労政部長(当時)の答弁が当時の問題意識を描いている。「国鉄在来線に新設駅を設置することについてでございますが、郡山駅を基点に見ますと、東北本線の郡山日和田間は5.7キロ。それから郡山安積永盛間は4.9キロ。それから磐越東線の郡山舞木間は5.8キロ。磐越西線の郡山喜久田間は7.9キロの営業距離と、郡山周辺の場合を見ますとなぜか駅間の距離が長くなっているわけでございます」と述べ、郡山駅と隣接する各路線の駅との距離が長いという認識を示した。その上で、「これら国鉄線が通過しております市街地には、住宅、学校、商店、工場などの施設が張りつきまして、通学、通勤者がふえている状況にあることもまた事実でございます」と当時に至る土地利用の変化を省察している。一方、国鉄における新設駅の設置については、「経営状況から用地を含みます駅舎の建設費は全額地元が負担し、無人駅が原則となっておるわけでございます」とした上で、「新設駅の設置には多額の経費を要するために地域の利用者の意向、さらには利用状況、地域の発展状況など総合的に十分調査しながら対応してまいりたいと考えておりますので、ご了承いただきたいと思います」と締めくくられている。

 建設省東北地方建設局(当時)と福島県、郡山市などで組織された郡山都市圏総合都市交通計画協議会が実施主体となり、郡山都市圏総合都市交通体系調査(パーソントリップ調査)は、1986(昭和61)年度に実施され、1988(昭和63)年度には、2010(平成22)年度を目標年とする郡山都市圏総合都市計画が策定された。同計画は、郡山都市圏9市町村(郡山市、須賀川市、本宮町、長沼町、鏡石町、三春町、船引町、岩瀬村、玉川村(いずれも当時))における将来の都市構造と交通網、交通施設整備計画など都市交通の指針である。このなかでは、「外郭環状8放射構想」が提起された道路網マスタープランに加え、バスレーンの専用化などと並び、鉄道新駅の設置が提案されおり、まずは、郡山駅を中心に安積永盛駅。舞木駅、喜久田駅のそれぞれ中間周辺に必要と位置づけられた。一方、このころの市議会では、新駅設置の陳情とならび、反対する陳情も審査されている。1987(昭和62)年12月定例会における経済厚生常任委員会の報告(森尾辰雄議員(当時))では「陳情第1号 磐越西線東原駅(仮称)新設についてでありますが、本件と陳情第18号 東日本鉄道株式会社鉄道線、新駅設置反対については、関連の案件でありますので、併合審査いたしました。今回の陳情第18号は、バスとの競合問題の関係上、新設駅の設置を見合わせてほしいというものであり、陳情第1号とは相反する趣旨となっている」との発言がある。反対陳情は、福島交通労働組合から出されたものであるが、当時の福島交通社長からも同趣旨の陳情が提出されていることも記されており、当時の郡山市は、駅予定地周辺から半径約1kmの世帯を対象にアンケート調査を実施し、バスへの影響を分析しようとしていた。また、JR東日本は、新駅を設置した場合の将来にわたる採算性の検討を求めていたことも議事録に残されている。

 その後も、市議会では、新駅開設にかかる質問が見られたものの、事業化には至らず、2006(平成18)年度からの4ヵ年で実施された2回目の「郡山都市圏総合都市交通体系調査」においても、バスや鉄道の利用者数が減少を続ける中で鉄道の新駅設置が実現されなかったと省察された。しかし、同調査に基づき策定された現行の「郡山都市圏総合都市交通計画」では、鉄道利用を促進する観点から、郡山駅・喜久田駅間、郡山駅・安積永盛駅間の2駅が位置づけられ、そのうち、駅間距離がより長い郡山駅・喜久田駅間の新駅設置の重点化が図られることとなった。2011(平成23)年から2014(平成26)年にかけて、新駅設置の基本調査及び設計がJR東日本への委託により実施され、2015(平成27)年3月には「新駅及びこ線人道橋の整備に関する基本協定」を郡山市と同社との間で締結し、同年9月には、国土交通省東北運輸局からJR東日本に対して「事業基本計画変更認可」が下りたことで、郡山富田駅の開業に至った。


b 郡山中央スマートインターチェンジ

 東北縦貫自動車道郡山スマートインターチェンジは、郡山南インターチェンジから北に4.1km、郡山インターチェンジから南に4.6kmそれぞれ離れた位置に整備され、2019(平成31)年1月13日に供用が開始された。スマートインターチェンジは、ETC(電子料金収受システム)専用の追加インターチェンジであり、料金徴収に関わる施設の建設費や人件費が抑えられる特徴がある。同インターチェンジは、2010(平成22)年に策定された「郡山都市圏総合都市交通計画」の道路マスタープランのなかで、整備方針が示された。

 高速自動車国道におけるインターチェンジの新設は、高速自動車国道法に基づく連結許可を国土交通大臣から受けることが必要である。同スマートインターチェンジは、郡山市が申請者となり、東北地方整備局管内で申請のあったその他7ヵ所とともに、2013(平成25)年6月11日に許可され、県道「郡山矢吹線(新さくら通り)」と本線直結型で連結されることとなった。同インターチェンジの計画交通量は、1日2,000台である。郡山市総合交通政策課の公表資料によると、2019(令和元)年7月には、開通以来はじめて日平均2,000台を超え、2020(令和2)年7月に累計通過台数100万台を、2021(令和3)年12月に同じく200万台を突破したとあり、利用状況としては、順調に推移している。

 郡山市と東日本高速道路株式会社の連名によるニュースリリ―ス(2018(平成30)年12月14日)では、期待される整備効果として、「市街地へのアクセス性の向上」、「救命率の向上」、「災害時の物資輸送・人的支援活動の円滑化」を挙げており、以下の具体的な記載がある。

・高速道路から郡山市役所をはじめ、郡山駅や商業施設などが集積する市街地へのアクセス時間が短縮することで、アクセス性の向上が図られ、交流人口拡大による地域の活性化が期待されます。

・県中・県南地域唯一の第三次救急医療施設である太田西ノ内病院へのアクセス向上が図られ、救命率の向上が期待されます。

・郡山中央スマートインターチェンジ(IC)は、郡山市の災害時の拠点となる「陸上自衛隊郡山駐屯地」、「郡山消防署」や物資輸送の拠点となる「開成山公園」等からの最寄のICとなり、首都直下地震や南海トラフ地震などの大規模災害が発生した場合、物資輸送・人的支援活動の円滑化が期待されます。

 これらの整備効果がどう発現したかについて、福島県土木部高速道路室が資料を取りまとめている。まず、「市街地へのアクセス性の向上」については、高速道路と中心市街地を結ぶ交通が分散したことで、渋滞区間である国道49号の交通量が減少し、国道49号郡山インターチェンジ入口~開成山交差点間の所要時間が開通前(2018(平成30)年9月)と比べて、開通後(2019(令和元)9月)は平均4.3%短縮されたと述べられている(平日のETC2.0走行機歴データより算出)。次に、「救命率の向上」では、須賀川および白河地方広域消防本部管内の救急搬送者の22%余りが郡山市内の病院に運ばれているが、そのうち15%が郡山中央スマートインターチェンジを利用(2019(令和元)年11月~12月)しており、搬送時間の短縮に寄与していると記されている。また、「災害時の物資輸送・人的支援活動の円滑化」に関しては、2019(令和元)年10月の台風19号に伴う自衛隊の災害派遣を例に挙げ、陸上自衛隊郡山駐屯地へのヒアリング結果として「台風第19号に伴う災害派遣では、郡山駐屯地への部隊集中や、いわき市等への進出の際に活用し、開通前に比して、郡山駐屯地から高速道路へ入るまで、片道約20分の時間短縮ができたことにより、迅速な部隊展開が可能となった」と記している。このほか、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の除染で発生した土壌や廃棄物等を中間貯蔵施設まで運搬する際に、郡山市中心部を回避した経路を選択できるようになり、迅速かつ安定した輸送が図られたことにも触れられている。