郡山市の経済及び地域の活性化に向けた諸活動を、民間レベルで中心的に支えているのが郡山商工会議所である。「企業を育て、地域を伸ばす」をモットーとする郡山商工会議所は、これまで長きにわたり一貫して中小企業の経営支援と地域経済の発展、そして地域活性化のために重要な役割を果たしてきた。郡山商工会議所の事業は3本柱で構成され、すなわち1.「まち」づくり(中心市街地活性化事業、インフラ整備等を通じた都市基盤の強化等)、2.「しごと」づくり(創業や事業承継、販路開拓などの支援、関係機関と連携した新産業の創出等)、3.「ひと」づくり(企業と人材の出会いを創出するマッチング事業、各種資格取得やキャリアアップ講座などによる人材の育成と確保)に取り組んでいる。以下では、東日本大震災をはじめさまざまな難局に対処してきたこの10年間の取り組みについてみていく。
2011(平成23)年3月に発生した東日本大震災では、郡山商工会議所の会館が大きく損壊し建て替えを余儀なくされ、2014(平成26)年11月の新会館の完成まで他の施設への移転を余儀なくされた。また震災と原子力災害は郡山市に立地する企業・事業所にも甚大な被害を与え、郡山商工会議所では会員企業と地域の復旧・復興に懸命に取り組んできた。
当時、復興支援の枠組みとして大きな役割を果たしたのが「中小企業等グループ補助金」である。グループ補助金とは、被災地域の中小企業等のグループが復興事業計画を作成し、地域経済・雇用に重要な役割を果たすものとして県から認定をうけた場合に、施設・設備の復旧・整備に対して国・県が補助するものである。東日本大震災で初めて導入されたこの補助金枠組みは、後の令和元年東日本台風や令和3年福島県沖地震の際にも企業・事業所の復旧・復興に重要な役割を果たすこととなる。
さて郡山商工会議所は、2015(平成27)年に創立90周年を迎えた。記念事業として、前述のこおりやま産業博(KORIYAMA EXPO)の開催や奈良商工会議所との姉妹商工会議所の盟約締結のほか、2017(平成29)年には民間目線で郡山市の夢と希望のある将来像を考える「郡山グランドデザインProject会議」を発足させた。同会議は、商業、まちづくり、教育、医療・福祉、交通、ボランティアなどの団体、企業からの若い世代を中心としたメンバーで構成し、グランドデザインの策定に向けて会合を重ねた。公開講座やアンケート調査を通して市民の声も取り入れながら、「うまれる・つながる・かなでる・るるる♪わたしの郡山」を基本コンセプトとする将来像とその実現に向けた提言をとりまとめた。また、事業の柱の一つである「ひと」づくり(人材及び企業の育成)においても新たな取り組みを始めた。これから創業を目指す人を対象とする「こおりやま創業塾」は、およそ20年続いている定番のセミナーであるが、これに加え、事業承継者、承継候補者、経営幹部候補者を対象とする「こおりやま次世代経営者塾」を2018(平成30)年より毎年開講している。このように創業及び事業承継の両面をサポートしながら企業及び地域産業をけん引する次世代の人材育成を図っている。
2019(令和元)年10月に発生した令和元年東日本台風では、郡山市中央工業団地をはじめ多くの会員企業が被災した。郡山商工会議所では特別相談窓口を設置するとともに、被害状況を迅速に把握するため会員企業の被害状況に関するアンケート調査を実施し、これに基づき11月に市と連名で緊急要望書を国に提出した。また、郡山商工会議所復興グループとして、県にグループ補助金の申請を行い復興事業計画の認定をうけた。
2020(令和2)年からの新型コロナウイルスの感染拡大においては、市の支援パッケージである「郡山市中小企業等応援プロジェクト」の各施策を会員企業につなげ、申請を取りまとめるとともに、販路開拓SOS掲示板やWebを活用した支援施策情報ページを速やかに設置した。そして会員企業の経営実態に関するアンケート調査に基づき、市に新型コロナウイルス感染症対策に係る要望書を提出した。そこでは、1.新型コロナウイルス感染収束後の経済回復に向けた支援、2.中小企業・小規模事業者の倒産・廃業防止に向けた支援、3.「新しい生活様式」に即した事業継続に向けた支援に速やかに取り組むよう要請した。また、落ち込んだ消費需要とまちなかのにぎわいを取り戻すために、同年5月に福島県委託事業「飲食店応援前払利用券発行支援事業」(市内244店舗が参加)を実施するとともに、11月には国のGoTo商店街採択事業「こおりやま駅前ストリートフェス」を開催した。
コロナ禍の2021(令和3)年2月13日に発生した令和3年福島県沖地震(郡山市では震度6弱を記録)では、会員企業の被害状況に関するアンケート調査を通して、中小企業では多額の費用負担を要するが、コロナ禍の売上減少がネックとなり、防災対策に費用を回せない状況が明らかとなった。これに基づき「新型コロナウイルス感染症対策ならびに福島県沖地震(2021)被災に係る要望書」を市及び市議会へ提出するとともに、令和元年東日本台風の際と同様にグループ補助金の申請を支援した。また同年7月以降、市内医療機関と連携し、会員事業所の役員・従業員とその家族を対象とした新型コロナウイルスワクチン共同(職域)接種を実施し、集団接種会場や協力医療機関でワクチンを速やかに接種できるようにした。
そうした中で迎えた、東日本大震災から10年となる2021(令和3)年3月11日、市内5ヵ所で同時に花火を打ち上げ平和と復興を祈る「3.11オールフォーワンこおりやま」を市内商工会等と連携して実施した。