(3) 他団体との比較

 郡山市の財政は、健全な状態が続いており、県内の類似団体と比べて余裕がある。郡山市と同じ中核市である福島市といわき市の財政指標を比較するとそのことが明らかである。表1は、財政力指数、実質収支比率、経常収支比率、実質公債比率について10年間の推移を示している。

 財政力指数は、地方自治体の財政力を示す指数である。地方交付税の算定に用いる基準財政収入額に対する基準財政需要額の割合を示している。1.0を超える場合には、地方税収が基準財政需要額を上回るほど豊かであるとみなされ、普通交付税の不交付団体となる。3市の財政力指数の推移をみると、いずれの年度においても、最も高い数値を示しているのが郡山市である。東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により2012(平成24)年度から数年間は減少するものの、徐々に回復して、2017(平成29)年度以降は0.8以上となっている。

 実質収支比率は、標準財政規模(地方自治体の経常的一般財源の規模)に対する実質収支額(歳入歳出差引額から翌年度に繰越すべき財源を除いた金額)の割合である。実質収支比率がマイナスの場合には、財政運営が不健全であることを示す。3〜5%が適正な水準とされている。郡山市では、低い年度で5.8、高い年度で9.4と適正水準を上回っている。実質収支比率が黒字となっている理由は、繰越金の増加である。東京電力福島第一原子力発電所事故の影響による除染事業や除去土壌等搬出事業、災害廃棄物処理事業、新型コロナウイルス感染症対策に要する給付事業によるものである。緊急的・臨時的な対応による繰越金の増加であるため、財政運営に問題はないと考えられる。

 経常収支比率は、財政構造の弾力性を判断するための指標である。経常一般財源(毎年度の経常的な収入)のうち経常的経費(毎年度の経常的に支出される経費)に充当されたものが占める割合を示している。経常収支比率が高いほど財政構造が硬直的と判断される。かつては80%が望ましいとされてきたが、近年は社会保障給付など経常的経費が増大していることから、80%を超える自治体が増えている。郡山市では、他の類似団体に比べて、経常収支比率が高い年度がある。2016(平成28)年度及び2017(平成29)年度において90を超えている。2018(平成30)年度以降から徐々に減少し、2021(令和3)年度には80.3%と大きく改善している。

 実質公債費比率は、実質的な公債費による財政負担の程度を示す指標である。標準財政規模に対する実質的な公債費相当額に充当されたものが占める割合を3ヵ年度平均で示したものである。実質公債費比率が18%を超えると地方債の発行に当たり総務大臣又は都道府県知事の許可が必要となる。3市における実質公債費比率の推移を見比べると、郡山市は福島市に次いで低い値となっている。郡山市では、10%を超える年度はなく、低い水準であることが窺える。

表1 福島県の中核市3市の財政指標
郡山市 福島市 いわき市
財政力
指数
実質
収支
比率
経常
収支
比率
実質
公債費
比率
財政力
指数
実質
収支
比率
経常
収支
比率
実質
公債費
比率
財政力
指数
実質
収支
比率
経常
収支
比率
実質
公債費
比率
2012年度 0.73 6.1 86 6.7 0.69 8.7 84.4 4.9 0.64 6.6 85.6 12.6
2013年度 0.73 6.2 86.5 5.9 0.69 8.1 85.9 4.5 0.65 9.4 84.9 12
2014年度 0.74 6.6 87.5 5 0.7 8.5 86.4 3.5 0.68 7.5 85.8 11.1
2015年度 0.77 6.1 88.1 4.6 0.73 10.4 83.9 2.7 0.72 7.1 83.9 9.7
2016年度 0.79 5.9 90.6 5.1 0.75 7 87.5 1.7 0.75 5.2 85 9.4
2017年度 0.8 5.8 90.6 5.6 0.76 7.1 89.4 1.6 0.77 6 84.7 8.3
2018年度 0.82 5.8 88.3 5 0.78 8.2 88.7 1.1 0.79 6.1 84.6 7.9
2019年度 0.84 6.5 88.4 4.3 0.78 8.7 89.4 1.2 0.8 1.9 86.6 7
2020年度 0.85 8.6 87.4 3.2 0.79 8.7 89.8 1.1 0.8 3.7 87.1 7.2
2021年度 0.84 9.4 80.3 2.7 0.78 13.8 86.4 1.4 0.79 10.3 86 7.8
出所:各年度の総務省「市町村別決算状況調」から筆者作成