(1) 歳入の状況

 郡山市の10年間における財政の特徴を歳入・歳出面からみていく。歳入面の特徴は、東京電力福島第一原子力発電所事故への対応や新型コロナウイルス感染症対策に伴い、過去に例をみないほど増大したことである。表2は郡山市における10年間の歳入内訳の推移を示したものである。同表を用いながら、10年間における歳入の構造について見ていきたい。

 歳入総額は、東京電力福島第一原子力発電所事故が発生する前の2010(平成22)年度時点と比べると増大している。2010(平成22)年度における歳入総額は1,099億円であった。2010(平成22)年度を基軸にすると、歳入総額は、2012(平成24)年度に1.3倍、2016(平成28)年度に1.6倍、2020(令和2)年度に1.8倍となっている。2020(令和2)年度は郡山市において過去最大の歳入総額となっている。

 歳入総額の主な増加要因は、県支出金と国庫支出金にある。県支出金は、2013(平成25)年度から2016(平成28)年度までの間に増額している。この増額は、除染対策事業に要する交付金が福島県を通じて交付されていることによる。

 国庫支出金は、2020(令和2)年度及び2021(令和3)年度に大幅に増額している。これは、新型コロナウイルス感染症対策のために特別定額給付金給付事業・事務費補助金及び新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金などが国から措置されたことによる。

 地方税は、東京電力福島第一原子力発電所事故や新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により減収となった。東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により2012(平成24)年度から2016(平成28)年度まで減収となり、2017(平成29)年度には増収に転じた。その後増加したものの、2020(令和2)年度には新型コロナウイルス感染症の感染拡大により減収となった。地方税減収の要因は、固定資産税の評価替えによる評価額の低下、被災者等に対する減免措置である。

 地方債は、2010(平成22)年度の水準と比べると、やや増加しているものの、先述したように実質公債費比率は低く抑えられている。また、2020(令和2)年度を除く9ヵ年度については、地方債のおよそ半分が臨時財政対策債である。臨時財政対策債は、国から交付される地方交付税の不足分を地方自治体が起債によって補填するものである。臨時財政対策債の元利償還金相当額は、翌年度に地方交付税措置される。


表2 郡山市における歳入内訳の推移 (単位:億円)
出所:各年度の総務省「市町村別決算状況調」から筆者作成