郡山市の復興指針に基づき、どのような行財政運営、復興事業がなされてきたのかを具体的に見ていく。
表4と表5は、郡山市の普通会計のうち復旧・復興事業分についてそれぞれ歳入と性質別歳出を整理したものである。
復旧・復興事業分の歳入の特徴は、市の負担が抑えられていることである。表4をみると、多い年では90%、少ない年でも66%が国や県からの移転財源である。
国の東日本大震災復興基本方針では、復興を担う市町村にとって使い勝手のよい自由度の高い交付金等を創設し、地方負担分を手当して地方の復興財源を確保することが謳われた。その代表的な制度が、東日本大震災復興交付金、福島再生加速化交付金、特別交付税の交付による取崩し型復興基金、震災復興特別交付税である。
国庫支出金の主なものは、被災したインフラや公共施設等の復旧を対象とする災害復旧事業費補助金及び東日本大震災復興交付金に加えて、原子力災害に対応するために措置された福島再生加速化交付金である。県支出金の大半は、除染事業や除去土壌等仮置き場整備・搬出等を対象とする財源である。
一般財源等には、国から交付された取崩し型復興基金及び震災復興特別交付税が含まれている。取崩し型復興基金は使途限定がなく、自治体にとって自由度の高い財源である。震災復興特別交付税は、被災自治体の財政負担を解消するために新たに創設された制度である。被災自治体が国庫補助事業や単独事業を行う際に生じる地方負担分に対して措置される。
これらの財政措置により、郡山市における地方債の発行は抑えられ、市負担も軽減されたと考えられる。
復旧・復興事業分 | (A+B)/C | ||||||||
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国庫 支出金(A) |
都道府県 支出金 (B) |
繰入金 | 繰越金 | 地方債 | 一般 財源等 |
その他 | 歳入 合計(C) |
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2012年度 | 4,099 | 12,049 | 265 | 1,642 | 325 | 5,947 | 254 | 24,580 | 66% |
2013年度 | 4,475 | 29,302 | 1,386 | 664 | 97 | 3,682 | 26 | 39,631 | 85% |
2014年度 | 906 | 44,627 | 2,291 | 378 | 15 | 5,209 | 52 | 53,479 | 85% |
2015年度 | 2,956 | 41,438 | 2,284 | 2,579 | 92 | 6,246 | 57 | 55,653 | 80% |
2016年度 | 3,071 | 46,940 | 2,431 | 1,746 | 1,434 | 2,025 | 134 | 57,781 | 87% |
2017年度 | 2,831 | 17,324 | 783 | 1,448 | 1,639 | 1,872 | 111 | 26,007 | 77% |
2018年度 | 4,430 | 11,608 | 1,946 | 69 | 487 | 2,252 | 96 | 20,888 | 77% |
2019年度 | 1,505 | 13,566 | 1,724 | 705 | 8 | 1,114 | 126 | 18,748 | 80% |
2020年度 | 392 | 20,381 | 678 | 287 | 131 | 1,194 | 128 | 23,191 | 90% |
2021年度 | 570 | 6,918 | 167 | 499 | 272 | 1,913 | 61 | 10,401 | 72% |
出所:各年度の総務省「地方財政状況調査」から筆者作成 |