(3) 復旧・復興事業分の性質別歳出の特徴

 続いて、歳出面から具体的にどのような復旧・復興事業がなされてきたかを確認していこう。表5の復旧・復興事業分の性質別歳出をみると、物件費と投資的経費が目立って高く、歳出合計に占める両経費の割合は2018(平成30)年度を除いて9割を超えている。除染や公共施設・インフラの復旧・整備に比重が置かれてきたことがわかる。

 物件費は主に除染費用である。追加被ばく線量が年間20mSv以下の地域を年間1mSv以下にすることが除染の長期目標として定められた。郡山市には、追加被ばく線量が年間1mSvを超える地域があることから、国から汚染状況重点調査地域の指定を受けた。汚染状況重点調査地域では、市町村が除染主体となっている。郡山市では、2011(平成23)年12月に「郡山市ふるさと再生除染実施計画」が策定された。優先的に小中学校や保育園・幼稚園の除染が取り組まれ、順次、公園、農地、道路、一般住宅等の除染が行われた。除染実施計画に基づく除染は2011(平成23)年度に開始して2017(平成29)年度に完了した。同計画とは別に、農業用水源のため池除染が2016(平成28)年度から2017(平成29)年度までの間に実施された。除染は、除染実施計画に基づく除染は県支出金、ため池除染は国庫支出金を主な財源にして、郡山市主導で除染が行われた。

 投資的経費の内訳をみると、災害復旧事業が多くを占めている。災害復旧事業は、被災したインフラや公共施設等の復旧に要する経費である。地震により、市役所本庁舎をはじめ、行政センター、市営住宅、公立学校、社会教育施設、体育施設、文化施設、保育所、公民館、児童福祉施設などの公共施設に加えて、道路や林道、河川、公園、上下水道、農業集落排水などの道路やインフラが被災し、復旧事業が行われた。普通建設事業費には、放射能汚染対策として新設された公共施設や、新設や改修に要した費用が計上されている。郡山市では、福島再生加速化交付金を活用し、新たに屋内プールや多目的グラウンドが建設された。放射能汚染の影響を懸念して屋外での子どもの運動の機会が減ったことから、屋内運動施設が整備された。

 扶助費に目をむけると、被災者の生活支援にも力が入れられてきたことが窺える。2012(平成24)年度には扶助費が増額している。扶助費は、災害弔慰金など現金で支給する経費である。支給件数は災害弔慰金10件、災害見舞金18,414件、災害援護資金貸付650件であった。住宅応急修理や借上住宅の提供など住宅再建の支援も行われた。

表5 郡山市における復旧・復興事業分の性質別歳出  (単位:百万円)
経常的
経費
投資的
経費
(B)
歳出
合計
(C)
(A+B)/C
人件費 扶助費 公債費 物件費

(A)

補助費等 積立金 その他 普通
建設
事業費
災害
復旧
事業費
2012年度 16,482 189 1,027 0 14,311 492 218 246 6,587 342 6,245 23,070 91%
2013年度 31,989 348 42 13 28,479 1,282 1,611 215 7,169 1,152 6,017 39,158 91%
2014年度 41,526 294 39 16 38,583 657 1,890 47 10,059 3,978 6,081 51,585 94%
2015年度 32,299 150 30 19 29,652 293 2,142 13 21,862 9,954 11,909 54,162 95%
2016年度 32,393 282 28 20 31,394 186 195 287 24,646 8,528 16,118 57,039 98%
2017年度 2,868 230 20 68 2,190 266 87 9 22,980 6,895 16,086 25,849 97%
2018年度 5,007 13 20 93 1,063 221 3,537 60 14,235 3,044 11,192 19,242 80%
2019年度 2,352 7 15 102 964 189 1,024 50 16,130 3,041 13,088 18,481 92%
2020年度 926 64 22 106 620 33 78 3 21,741 1,565 20,177 22,668 99%
2021年度 812 52 16 114 463 109 25 32 9,052 2,262 6,790 9,864 96%
出所:各年度の総務省「地方財政状況調査」から筆者作成