(4) 産業の再生

 郡山市では、産業再生についても積極的に取り組んできた。国は、被災地域の産業復興を目的に、新たな財政制度を創設した。その主な制度が、被災した中小企業を支援する「中小企業組合等共同施設等災害復旧補助金」(グループ補助金)及び、新たな産業創出を促進する企業立地補助金等である。郡山市は、企業に対してこれらの制度の活用を促して、被災企業の復興をはかるとともに、新たな企業誘致を進めた。グループ補助金については第2章の第6、7節に譲り、本稿では、企業立地補助金等について扱うこととする。

 原子力発電所に代わる雇用の場が必要であるとして、福島県の「復興ビジョン」に新たな時代をリードする産業の創出が主要施策として掲げられた。福島県の意向を反映し、東日本大震災復興対策本部によって2011(平成23)年7月に策定された「東日本大震災からの復興の基本方針」には産業政策と一体で雇用復興を図ることや、福島県において再生可能エネルギー産業と医療産業の拠点整備をすることが盛り込まれた。

 郡山市が国や県に積極的に働きかけた結果、国立研究開発法人産業技術総合研究所の福島再生可能エネルギー研究所及び、ふくしま医療機器開発支援センターの立地が市内に決まった。福島再生可能エネルギー研究所は、再生可能エネルギー技術の早期の実用化を目指した応用中心の研究拠点である。国から措置された施設整備費補助金50億円を用いて施設整備された。ふくしま医療機器開発支援センターは、医療機器に関する世界基準の安全性評価機能を有し、開発から事業化までを一体的に支援する施設である。運営法人は一般財団法人ふくしま医療機器産業推進機構である。国から県へと医療機器産業拠点整備等事業費補助金134億円が交付され、施設整備に充てられた。前者は2014(平成26)年4月に、後者は2016(平成28)年11月に開所した。

 2011(平成23)年12月には東日本大震災復興特別区域法が施行され、同法に基づき福島県全域がふくしま産業復興投資促進特区に指定された。2011(平成23)年度には同特区に工場等を新増設する企業に対してその経費の一部を補助する「ふくしま産業復興企業立地補助金」が創設された。2012(平成24)年度には類似の制度で、対象を福島県全域に加えて津波浸水地域4県にまで広げた「津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金(製造業等立地支援事業)」が措置された。従来の企業立地補助金よりも補助対象は広く、補助率も高く、手厚い制度であった。

 2011(平成23)年度から2021年度までの間に、ふくしま産業復興企業立地補助金を利用して61社、津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金を用いて34社、合わせて95社が郡山市で工場等を新増設した。業種別にみると、製造業が66社、卸売業・小売業が18社、運輸業が7社、情報通信業が4社である。