(2) 市民所得

 市民所得は雇用者報酬、被企業部門の財産所得、法人企業所得によって構成される。前述の総生産が市内において生産された付加価値であるのに対して、市民所得は市内に住む者(自然人としての人に限られない)に配分された所得に注目するものである。

 市民所得のうちで最も大きな比重を占めるのは雇用者報酬である。雇用者報酬は労働への反対給付である賃金・俸給と、社会保険料の雇用者負担分を含む雇用者負担からなっている。非企業部門の財産所得は利子や配当や賃借料からなる家計部門、一般政府部門、対家計民間非営利部門のおおきく三つの部門への分配所得から構成される。企業所得は民間法人企業、公的企業、(持ち家を含む)個人企業から構成される。

 郡山市の経済的地位と立地から、郡山市外から郡山市内に通勤する労働者は多く、郡山市内の総生産のうち郡山市民の市民所得として分配される部分はその分減ることになる。その逆もあっても,相対的には小さくて市外への市民所得の分配分は相殺されない。

 そうした点を前提として市民所得の推移を見ると、2013(平成25)年度から2020(令和2)年度にかけて、約9,667億円から2017(平成29)年の約1兆230億円を最高として、約9,699億円へと推移した。市民所得総額自体はほとんど変わっていない。

 この額をその時の市人口で除した1人当たり市民所得の推移は、同じ期間に約295万円から2018(平成30)年の約306万円をピークとして、その後は減少している。図1でみたように、この時期に市の人口は微増していることと市民所得が微減していることの合力である。なお、この1人当たりでみた場合の水準は、福島県がまとめる県民1人当たりの市民所得よりはわずかだが高く、そして推移の傾向は同じである(福島県統計課『令和3(2021)年度 福島県県民経済計算の概要』<https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/11045b/17613.html>参照2024年9月6日)。