(1) 研究所の開設と施設の整備

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故後の福島県の産業は、再生可能エネルギーがキーワードになった。震災・原発事故の影響を大きく受けた浜通り地方で福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想が進み、福島水素エネルギー研究フィールド(浪江町)や福島ロボットテストフィールド(南相馬市)などが整備される中、福島県の中央に位置する郡山市にも次世代エネルギー、次世代産業の研究開発を支える拠点が整備された。

 産業技術開発を担う国内最大級の独立行政法人「産業技術総合研究所(産総研)」は2011(平成23)年、郡山市の郡山西部第二工業団地内に再生可能エネルギーに特化した研究拠点を新設することを決定した。福島県は東京電力福島第一原発事故からの復興策の柱として国に再生可能エネルギー施設の県内への整備を求めており、国が要求に応えた。2012(平成24)年11月、産総研は郡山市と用地売買契約や連携協定を締結し、2013(平成25)年1月、拠点施設を着工した。産総研は2013(平成25)年10月、拠点施設を運営する新部署「福島再生可能エネルギー研究所」を設立、茨城県つくば市の産総研つくばセンターで施設の開所準備に取りかかった。

 2014(平成26)年3月までに工事が終了し、同年4月1日、「福島再生可能エネルギー研究所」が開所した。約5.5ヘクタールの敷地に、鉄筋コンクリート造り4階建て、延べ床面積約7,200平方メートルの研究本館、鉄骨造り一部2階建て、延べ床面積約4,700平方メートルの実験別棟、太陽光発電や風力発電などの実証実験を行う実証フィールド約3万平方メートル、地中熱利用実験場約1,700平方メートルが整った。開所までの総事業費は約101億円を費やした。

 主な研究テーマとして、再生可能エネルギーネットワーク開発・実証、水素キャリア製造・利用技術、高効率風車技術・アセスメント技術、薄型結晶シリコン太陽電池モジュール技術、地熱の適正利用技術、地中熱ポテンシャル評価・システム最適化技術の6分野を掲げた。大学や企業との共同研究を通じて技術力向上と産業集積、人材育成に取り組み、福島県の復興を後押しすることへの期待が高まった。政府のエネルギー基本計画には、福島県を再生可能エネルギーの産業拠点とすることを明記しており、研究所はその中軸を担うことになった。開所時の職員・研究員は所長・大和田野芳郎(おおわだの・よしろう)をはじめ68人体制で、外部研究員も合わせると約120人の陣容でスタートした。

 施設整備は開所後も継続し、2016(平成28)年4月には直流電力を家庭で使える交流電力に変換するための大型パワーコンディショナーの試験評価・研究開発施設「スマートシステム研究棟」が稼働した。